2010/12/24 @JCND事務局(京都)
聞き手:JCDN R.Mizuno
今回の作品は小道具や映像が重要な演出になっている。メンバーの活動拠点である東京都内でのリハーサルを重ねてきたが、実際に舞台と同じ広さで小道具を使ったり、映像を2面で出したりというのは、日々の通いながら2-3時間のリハーサルでは、実現不可能なことが多い。今回、ダンスインレジデンスを和歌山県上富田文化会館の協力を得、舞台スタッフ4名がつきっきりで、映像、小道具、照明、音響の試しのリハーサルを5日間劇場で行なうことができた。最終日の12月23日には、途中経過を公開するワークインプログレスとして発表。地域の方が20名ほど参加していただきShowing後、感想をお聞きする場を持つなど充実した機会となった。次の日、京都のJCDN事務局で、リハーサル終了直後の村山に話しを聞いた。年明け14日松山公演での初演を迎える。
— 上富田でのレジデンスリハーサル、お疲れ様でした。今回の劇場でのリハーサルの成果は?
初めて全部の絵が見えた感じです。絵で例えると、今まで画用紙がない処にとりあえずモノを置いてさぐっていたけれど、初めて画用紙の上に全部の素材を描いて、それをちゃんと離して遠くから見れた感じ。そうすると、作品の中で自分がちゃんとクリアーにテーマをつくれているところと、つくれてなかったところが、ものすごい差が出て見えて、クリアーになってなかったところが、ホントにくっきり浮かび上がるような形で、舞台の上で見えましたね。
あと、映像の存在っていうのが予想していたよりも、すごく強くて。それはたぶん、佐東さんが協力的に動いてくださったこともあり、上富田で実際に理想どおり実現できたから見えてきたことなんですが、東京のリハーサルでの予想だと、映像がそこまで鮮明に客席の方にまで届くというイメージがなかったんです。しかし、実際に投影してみると、プロジェクターも明るいし鮮明だったので、映像が、さも「映像だー」というように見えるのではなく、映像の中のイメージだけが、グッーと前に押し出されるように伝わるくらいきれいに見えた。それに対して、つまり映像のくっきりさ、クリアーさ、クオリティに対しての“踊り”っていう事とか、“小道具との関係”とか、“場面の転換”のところが、つめられていなかったんだなあ、ということがわかりました。
滞在が始まって、まず第一に、映像の投影をできるようにしようというのがあって動いていました。滞在初期段階で、理想に近い投影ができたから、それに対して、場面がとにかくブツブツ切れてしまっている、という箇所がはっきりと問題「点」というように見えて、じゃあどうしようかって。それ以降は、段を追ってつまってくるという感じでした。もっとここはクロスしようか、いやそこはもっと重ねていい、とか、ここ重ねて前省いていいとか、場面のつなぎがどんどん整理されていくことで、もっとほかのつまってないところが、逆にさらにみえてくる、というか。
— なるほど。昨日の最終日、お客さんを迎えてのShowingはどんな手ごたえでしたか?
そうですね。Showingの後のアフタートークで、観ていただいた方の感触を直接聞けたのが大きいです。「なんか強く伝えたいことがあるんだろうな」と皆さん汲んでくれているのだけど、「でもわからない」という、モヤッとした感じを、皆、共通して持っているなあって。よい印象を持って感想を言っていただいた女性の方でさえ、わからないところがあると。それを受けて、「そうか、なんか、まだ私の中でも表現がモヤモヤしている、整理されていないことがある」ということがわかったんです。言われて、すごく、思い当たるんです。それってすごく必要なことで。
— そのモヤモヤの原因は何だろうって、さっき京都に向かう電車の中で話していたんですよね。
そう、それは何なんだろうって、いろいろ話していくうちに見えてきて。そうなんです。一言でいったら、「お金を食って、愛を生む」それをやりたかったんだな、っていう。このコピーは、最後の映像、CMのパロディ風のコミカルなものですが、その中に入れていたキャッチコピーです。言葉だけだと、くすぐったいくらいストレートな表現です。とても伝えたいけれど、直球すぎても、受けては受け取りずらい。だから、それ以前に作品中で伝えるために、家族の模様があり、ヤギの存在が出てきて、場面の積み重ねで伝える工夫をしてきたつもりでしたが、ここにきてさらに、そのゴールに向けて、ストーリを整理して、それに一番あった表現に近づけるために修正をあと何日かでする必要があるなと。
— そうですね。それには、ヤギの衣装やヤギダンスがしっくりこないとか、山羊にまつわるストーリー部分をきれいにまとめすぎているようで、違和感があるね、とか。
そうそう。何人もの人から、「ヤギは可愛いですね。」って言われたのはすごく重要な意見でした。「アレ?何か違う」って。そう思われたくなかったのにって。ヤギを登場させて、ヤギはグロテスクであって欲しいっていうのが一つの直感としてあって。だけど、それがなんでヤギがグロテスクな存在であってほしいのかの理由付けができてなかったんですけどでも、絶対、出てきてほしいと。それは、紙幣をむしゃむしゃ食べてしまう、ご飯じゃなくてお金だけを食べてる、っていうグロイ存在として、ちょっと気が狂っちゃったような存在として居て欲しかった。だけどそれをお話の中の何処に入っていればいいんだろうって、いうのが繋がっていなかったんだな、って思って。繋がっていないんだけど、絶対に入れておきたいから、無理に繋げようとしたところが、すごく分かりにくくさせていたんだなって。そこはすごく納得して解決が見えてきました。誤魔化さないで、ちゃんとストーリを落とし込まないとならんという。いろいろつくり直しがみえてきました。松山に向けてさらにブラッシュアップしていきます。
— 今回の上富田でのレジデンスは、たくさん成果があったようで、JCDNとしてもダンスインレジデンスのやりがいがありました。1月14日の松山公演初演に向けて、やることがたくさんありそうでね。
初演の完成まで楽しみにしています。お疲れのところ、ありがとうございました。
Vol.2 END