03.11
内田敦子の場合 其の2
それはやっぱりドラマトゥルクでしょ。』
水野さんが言った。
私の呼称を何にするか話していた時の話だ。
なんだ、それは。
一体何語だ。
夢野久作みたいだ。
どうやら、演劇の世界のタイトルらしく、
軌道修正役のようなものだという。
響きがかっこいいので、良いことにした。
菅原から頼まれた内容は三点。
・制作中、絶対に煮詰まるから、たまに話を聞いて欲しい。
・作品を見た感想を教えて欲しい。
・各公演に同行して欲しい。
オヤスイゴヨウ。
私は軽く引き受けた。
いろいろなところへ行けるる〜、
温泉、関サバ、小豆。
ちょっとしたウキウキ旅行気分。
甘かった。
非常に甘かった。
別府の、
ガラス張りの稽古場に初めて足を踏み入れたときの、
あの、重苦しい空気。
作家のディレクションに対する出演者の不満。
コンフリクトに継ぐコンフリクト。
そして、また、コンフリクト。
頭を抱えた。
逃げたかった。
鉛色のショーイング。
午前4時、
暖房の効かない築100年の長屋で、
鼻水と涙でぐちょぐちゃんになった菅原の顔。
初演一週間前、凍った渋谷。
まさかの交代劇。
再生。
Messyについて考える度、
自分の心のヒダを剥がすことになる。
痛い、イタイ。
見たくない。
触れずにそっとしときたい。
そう思いながら、また一枚剥がしていく。
多かれ少なかれ
みんなとっちらかっている。
だからこそ、いとおしい。
何せうぞ くすんで
一期は夢よ ただ狂へ
まだ続くかも。
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