12月6-8日鳥の劇場にて、「ANONYM」−とりっとバージョンーのリハーサルを行います。岩淵多喜子さんによるblogは、このリハーサル後、12月下旬に掲載いたしますので、どうぞお楽しみに!

下記は、鳥の演劇祭3 2010/09/19,20 公演の当日パンフレットに掲載した文章です。

「ANONYM」-とりっとバージョン-

この作品は「時」と「記憶」をテーマに綴られるコラージュ的作品です。
作品の創作にあたり谷川俊太郎さんの「anonym」という詩を作業の土台として用いました。‘anonym’は「作者不明の」という意味です。「歴史」というものを考えた時、多くの人の人生は歴史に残るものではありません。それは‘偉業を成し遂げた人の’あるいは‘大きな事実’によって把握されている場合が多いですが、実際には歴史には残らない‘小さな事実’、‘日々のつまらないこと’、‘些細な事’の連続によって歴史は成立していると言っても過言ではありません。私はこの作品で、日常の中の‘小さな事実’、‘言葉にはし難いけれども何か些細で大切なこと’に光を当てたいと思いました。
人にはそれぞれの身体や心に刻み込まれた「記憶」があります。意識的に、そして無意識的に、それは生まれた時から、あるいは生まれる前から個々の生活や経験とともに染み付いているもので、それは、それぞれの人の「個性」に繋がっているものと言っても良いかもしれません。今回、「とりっとダンス」の皆さんと出会い、それぞれの個性から醸し出る豊かな表現に多くのインスンピレーションを受けました。その大らかさ、生真面目さ、ユーモア、、、つまりは「人らしさ」が、作品のテーマと共鳴し、光をあててくれています。

この作品は、詩や「原風景」の絵から掘り起こした、記憶や印象の断片を集めたコラージュ的作品です。この作品を通して、私がこの2週間、この自然豊かな「鹿野」の地で、「とりっとダンス」の皆さんとの作業の中で掘り起こした、「時の流れ」、そして「言葉にはし難いけれど、何か大切なこと」の感覚を観客の皆さんと共有することが出来たなら大変嬉しく思います。

この作品を創作する機会を与えてくれた、「鳥の劇場」の皆さん、スタッフ、JCDN、そして「とりっとダンス」の皆さんに心から感謝致します。

2010/09/18
岩淵多喜子