鳥取レジデンスの最後の公開ランスルーを見にきていただきました、地元のダンスグループで出演するみきさん、より丁寧な感想文が届きました。前回のワークインプログレスの時に引き続き、感受性豊かな講評を文章にていいただきましたので、公開させていただきます。感想文を読むと、こちらの意図する以上に先回りしてもらい感謝しつつも、もっと革新的な提示を与えなければ伝わらないなど反省も見ててきます。

ともあれ、作品はまだまだ、変容を進めています。各、公演地で多くの人に見ていただきたく思います。ブログご覧の方、よろしくお願いいたします。

「4….soku」に寄せて

「4….soku」は青木尚哉さん演出で、青木尚哉さんと山田勇気さんの二人での振付、出演となる。2012年2月26日に「鳥の劇場」で上演を予定されていますが、鳥取市鹿野町で作成中の「4….soku」を見せていただきましたので、その感想を寄せます。

舞台裏から、4本足の怪物が現れる。何かの因縁に取りつかれたような怪物で、ゆっくりと手足が絡み合って這い出した。2体の人間の体が絡まって、動いているのだが、ギリシャ神話に出てきそうな怪物であった。人間が2本足で歩き始めたのは何時ごろからだろうか。100万年前からだろうか。

前衛的なジャズのような音楽の中で、絡み合って動く2つの体が一つとなっている。

プリンターが動き始める。新聞紙や情報が満載された紙が打ち出されていく。

その中に「walk」の文字が見え、機械は止まる。

たが、「walk」は本当に「walk」であったのか。「wolk」でなかったか。うまく錯覚させられている。演出家は意図的に錯覚させようとしている。現代社会の情報の錯綜をみせて、現代社会を減退社会にしているのではないかと。人間は2本の足で立ちあがり、生活を豊かにし、文明を作った。しかし、本来は4本足の動物で、その行動や思考は動物のままであることを示唆している。

山田さんのソロのダンスがある。リズムを刻むように、ゆっくりの下半身から腰へ振動させている。下半身の振動が上半身へ伝わる。大地の震動が波動となって踊りが始まる。そして、機械が映し出していたスクリーンへ消えていく。消えていくというよりは機械の中に吸い込まれるイメージを作り出している。

その中に「walk」の文字が見え、機械はまた止まる。

死体となったように転がる1つの体がある。しかし、死んではいない。疲れ切った体の中で、「はっ」「はっ」と深い息が体の奥から出る。静かな、薄暗い空間に動き始める指がある。ゆっくりと腕が上がっていく。動き出した足がある。

その時に、僕の頭の中に徳永英明の「壊れかけのRadio」のメロディが流れた。「思春期に少年から大人にかわる 道を探していた汚れもないままに

飾られた 行き場のない 押し寄せる人並みに 本当の幸せ教えてよ」

後半、2人のダンサーが立ち上がって、対象へそして非対称となって踊る。2つの頭をつけあって、そこを中心にして、腕が、足が対象となる。動きが一致して、生きている鏡を見ているようだ。2人の息がみえるようだ。

二人の体が前後して重なり合う。二人が立っていて、4本の足がきちんとあった。進化した人間の姿をきちんとみせてくれている。