3月1日。再び来仙してちばりさんとみやさん、手代木と今回の作品を振り返るインタビュー、その後出演者との宴-反省会へ。自分の中で今回の「街に生きる」に一つのピリオドを1ヶ月経ってやっとの思いで打つことが出来ました、磯島未来です。

2月4日、せんだいメディアテークで踊りに行くぜ公演、本番が無事に終わりました。
最後の通し、それは本番でしたが、あの日は客席から手代木とちばりさんと並んで観ていました。あのときは一人のお客さんとして観に行きました。本番は21人に任せて観ているしか出来なかった、という言葉の方が適切でしょうか。もう私には本番を迎えるまでに皆に伝えるべきことは日々伝えてきたので、あとは客席から楽しみたかったのです。

本番「街に生きる」約30分、本当に温かい時間でした。

構成、シーンのキャスティング、順番もタイミングも曲も自分が選びました。
この作品については言葉に置き換えることが出来ないところも含め自分がよく知っているつもりでいました。
だけれど、本番のあの時間は私が想定していた時間より大きく冒険していたのです。
それは出演者が自らの身体で生み出したすごい時間だったのです。
知っているはずのことばかりなのに新鮮で素敵で眩しい時間でした。出演者21名が本当に強く存在して居て、それぞれがそれぞれの時間を持って街に生きていました。

ハトの家で稽古し続けて良くなっていっても、メディアテークに入ってから予想以上に頭を抱えることになってしまい(空間の使い方について大)どうしようどうしようどうしようと自分の不甲斐無さばかりで、反省多々。
それでも21人と手代木はついて来てくれました。私がこうしたい、という意見をまっすぐに聞き入れ受け取って実行する、その寛大な構えと強い実践に私はどれだけ助けられたのでしょうか。最後の最後まで、粘り強く向かってきてくれたから、あの時間は成立させらたのです。

作品の話を書くと、私はここ最近創った作品に共通することは、「人」を見て「人」で大部分の時間を構成しており、その「人」を知るために結構な時間を費やしていました。今回も12月のレジデンス6日間はまさにそれだけに費やしたと言っても過言ではなく、何をやるか根底ではあっても、ここに居る「人」たちでここで何が出来るのか、というのが私の作品の組み方であり創り方であり楽しみであり面白みでありダンスなのです。
だから、「人」を知らないと話は前に進まないのです。

舞台を観ていると、舞台上に立っている人がどういう人なのか大体見えてきたり私にはするもので。どれだけ違う仮面を用いて本来の自分とは違う存在を作ったとしても、勿論完璧に騙される場合もあるけれど、ダンスは特に身体が基本で存在しているのでそこには人柄や色が滲み出て、その存在によって私はその「人」に虜になったりならなかったりし続けて舞台を観続けてきて、作品も創ってきました。作品を創る経験というものはまだ多くはないですが。
今回の21人の舞台での存在は、それぞれの出演者がこれまでに過ごしてきた人生を、何にどう迷うのかを、何を大切に生きているのかを、そういったことが些細な動きから見え隠れし、どの人にも私は独自の色というものを見つけ、そして気づいたら21人の虜になって見入っていました。
すごくたくさん誉めていますが、稽古中はたくさん声を荒げてました。求めていることは簡単なことではないと分かっていながらも、言えば言った分、それ以上のことをしでかす人たちなので、欲はどんどん出て来てもっとすごいものを観ていきたくなったのです。

そんなすごい人たちが集まって踊って、客席から鼻をすする音が本番中あちらこちらから聞こえてきました。
これも私の想定には無かったことで、泣けるものより爽やかに清清しく、と目指し目指して、ドラマチックを避けてきたのに、それでも泣けてしまったという事はもう言うことありません。何かを感じて頂けたのならば、作品を創って来た者としては本望です。
何より自分が本番を観て客席で涙を流した一人でした。きっと泣くだろうと思っていたけど、それは3週間の日々を思い出して感傷的になるからだと思っていたのに、あの日泣いたのは、創った者として稽古を振り返った内輪で感じる涙とは別の、一人の観客として足を運んだ者として、流した涙だったと思っています。100パーセント客観的に観れてないのは本当で事実です。でも、それでも、私は一人のダンスを観に来た人でダンスを見て泣きました。ただあの21人の一人一人の立ち方・歩く姿・視線や表情に心を動かされ、真摯に向かう視線や身体のあり方は、本当に素敵でした。

ギリギリの時間の中で崖っぷち状態でしたが、全ての集中は2月4日のメデイアテークのあの時間にピークに集まって、あの21人が強く存在するあの空間でしか生み出せない時間が出来た奇跡でした。
奇跡は生の舞台の面白さで魅力です、本当にそう思う時間でした。

一区切り、つきました。本番は終わりました。もう稽古もありません。

次に皆と会える日はいつでしょうか。また会える日は来るのでしょうか。
これで終わり、と思いたくなくて、出来るならまた一緒に街に生きたいと思って止まないです。
その日が来ることを願って、だから私たちいまはそれぞれの道を進んでいても、またどこかでばったりなのか必然的にか、会える日が来るんだと思っています。

素晴らしき21名の強力な出演者の皆さま、
いせさん、ますいさん、すみちゃん、春ちゃん、しげこさん、きょうこさん、つっちー、りかさん、まっちゃん、はるみさん、わたるさん、やっしー、えみりちゃん、まりよちゃん、みくちゃん、照ちゃん、しーちゃん、澤野くん、ポコちゃん、小濱、ゆうたん
そしてアシスタントで隣に居てくれた手代木。
ずっと稽古に居てくれたちばりさん、サブのみやさん。
JCDNの皆さま、地元スタッフ皆さま・忍さん、斉藤さん、もとぎ先生。
ありがとうございました。
本当にありがとうございました。

あの街を21人とスタッフ皆で生きることが出来て、いまでも幸せです。