アーティスト・作品紹介
その素材である身体から生み出される「ダンス」は、生まれた瞬間に消えていってしまうという宿命を持っている。「ダンス」は見る者の前でZERO(何もない)からONE(何かが生まれる)の間の時空を行き来する。その時空を視覚化し、提示する。『ZERO ONE』は、つまりダンスそのものである。
1996年よりNYを拠点に活動してきた振付家、余越保子が日本で初めて創作・発表した『ZERO ONE』は、大阪とアムステルダムを拠点としてそれぞれ活動する双子のダンサー、福岡まな実と福岡さわ実を出演に迎え、余越が2010年に撮影した映画『Hangman Takuzo』からの映像とダンスを並列し提示する。同じ身体を持ちながらも、舞踊言語とその背景の違いにより全く異なる身体性を獲得した二人のダンサーと、「首吊り」を通して生を問うという、矛盾するように見えながらも強烈な生の行為を行うアクショニスト・首くくり栲象。映像とリアルなダンスの行き来の中で提示される相似と相違、自己と他者、存在と不在が舞台上にZERO から ONE へ移行する間の保留された時空を表出させる。2014年の初演からリ・クリエーションを重ねる本作は、現在進行形でアップデートされている。


振付・演出・映像:余越保子
出演:福岡まな実/福岡さわ実
映像出演:首くくり栲象/黒沢美香/川村浪子(映画「Hangman Takuzo」余越保子監督作品より)
映像コンサルタント:崟利子
衣裳:岩崎晶子
テクニカルディレクター:粟津一郎
制作:川崎陽子

余越保子 Yasuko YOKOSHI
京都在住。1996年よりNYを拠点に活動。 2003年と2006年にベッシー賞(NYダンスパフォーマンスアワード最 優秀振付賞)を連続受賞。 2009年–2013年、NYのThe Kitchenのキュレーター、Movement Researchのボードメンバーを務める。2013年に日本で初めて制作した『ZERO ONE』(JCDN「踊りに行くぜ!!」Ⅱ(セカンド)vol.4委嘱作品)を「鳥の演劇祭7」にて翌年上演。2015年、NYのDanspace Projectにて同作の英語バージョンを発表。NYタイムズ紙の批評家による2015年ダンス・ベストテンに選ばれる。


福岡まな実
大阪府出身。千日前青空ダンス倶楽部(土方直系、北方舞踏派出身の紅玉主催)に2000年から2009年まで所属、海外公演にも多数参加。2008年、Angers-Kyoto Dance Exchange Programに交換留学生として選出され、フランスのThe Centre National de Danse Contemporaine in Angersで学ぶ。現在フリーランスダンサーとして活躍し、国内外のアーティストの作品に参加している。


福岡さわ実
大阪府出身。2001年、オーストリアのウィーンで開催されるヨーロッパ最大のダンスフェステイバル「ImPluzTanz」の教育機関であるダンスウェブプログラムのスカラーシップを授与され参加。2002年にオランダ・アムステルダムを拠点にするダンスカンパニー「Emio Greco/PC」に参加、2013年までカンパニーのほぼ全作品のレパートリ−創作に関わり、世界各国へのツアーに参加。現在オランダのアムステルダムを拠点に、フリーランスのダンサーとして活躍する。