アーティスト・作品紹介
知的な分析では見出せない あるがままの心というものを 鳥の踊りが映し出します。
作品タイトル通りの本の中で、鳥の鳴き声を伴って言葉に体重がのしかかっている様、
二羽の鳥だけ信仰からはぐれ顛末が語られない様が描かれていること。
このことが私に強く突き刺さりました。踊りの作品にしたいと思いました。
色んなことがどんどん変わっていく中、体から発される動きや言葉から体重が消されることが怖いです。
そして、何の役にも立たないかもしれない踊りを続けていて、社会の歯車からはぐれている心持ちがあります。
踊りが言葉を扱わなくていいと思うにも、踊りは役に立たなくていいと思うにも、
私はそれらへの踊りの傷跡が足りません。
そしてそれとは別に今私は祈る踊りをしなければ前に進めません。
祈る踊りの両手の平に肉声と例外を握りしめたいです。


演出・振付:黒田育世
出演:伊佐千明/大江麻美子/野村琴音/政岡由衣子/矢嶋久美子/黒田育世
音楽:松本じろ
衣裳:萩野緑

「THE RELIGION OF BIRDS」仙台公演(撮影:越後谷 出)

[黒田育世インタビューより「踊りは、知的に分析しようとしたりすると逃げていってしまうもの。」]
全文はこちらから→http://odori2.jcdn.org/7/?p=400
 
「“カンパニーというものが独自の文化を立ち上げるのだ”ということがすごく重要で、言わば文化財なんですよね。その文化財を守っていくということは、カンパニーという機能がない限り相当難しいと思うんですよ。」
 
「「それを知的に分析したりすると」、これなんですよ。まるまる受け止めるだけというか、意識的なそういうことも重要だとは思うんですけど、それを手放す勇気ってすごく好きなんですよ。」
 
「心が知的に分析したりしても見つかるものじゃないんだよっていう。心の成したことを考えたとき、踊りは「知的に分析しようとしたりすると」逃げていっちゃうもの、そっちの側のことが好きなんです。」
 

黒田育世 Ikuyo KURODA
6歳よりクラシックバレエを始める。谷桃子バレエ団に所属しながら1997年渡英、コンテンポラリーダンスを学ぶ。00年より伊藤キム+輝く未来で活動、02年《BATIK》を設立。バレエテクニックを基礎に、身体を極限まで追いつめる過激でダイナミックな振付は、踊りが持つ本来的な衝動と結びつき、ジャンルを超えて支持されている。また、カンパニーでの活動に加え、金森穣率いるNoism05への振付提供や、飴屋法水、古川日出男、笠井叡、野田秀樹などさまざまなアーティストとのクリエーションも多い。
http://batik.jp/
https://www.facebook.com/batik.2002/

伊佐千明 Chiaki ISA
幼少より戸部有美子にクラシックバレエを学ぶ。RAD取得。木佐貫邦子に師事。 桜美林大学総合文化学科卒業。08年よりBATIKに参加し、11年より4年間21世紀ゲバゲバ舞踊団でも活動。他、舞台芝居、映画、音楽PV等に出演。横浜の港町を中心に、バレエオープンクラスを開講中。


大江麻美子 Mamiko OE
6歳よりユニークバレエシアター(現バレエスタジオHORIUCHI)にてクラシックバレエを堀内完、林かおりに学ぶ。2000年に渡米し、DEAN大学ダンス学部を卒業。帰国後〈伊藤キム+輝く未来〉での活動を経て、2005年より〈BATIK〉のメンバーとなる。他にも〈東京ELECTROCK STAIRS〉、田畑真希やカスヤマリコとのデュオユニットにも参加。。


野村琴音 Kotone NOMURA
富山県出身。和田朝子、伊通子にモダンバレエを師事。お茶の水女子大学文教育学部、舞踊教育学コース卒業。現在修士課程に在学中。2014年よりBATIKに参加。幼稚園児、中学生、高校生へのダンス指導も奮闘中。


政岡由衣子 Yuiko MASAOKA
大阪出身。8歳よりクラシックバレエを山本小糸に学ぶ。2005~2009年に渡蘭し、ロッテルダムダンスアカデミーを卒業。帰国後、向雲太郎、白神ももこ、長塚圭史などの作品に出演。14年よりBATIKに参加。まさおか式として作品づくりも行う。


矢嶋久美子 Kumiko YAJIMA
幼少より、クラシックバレエを学び、ベルギーのHoger Instituut voor Dansへ留学。帰国後、伊藤キム振付作品「花の歴史」に出演。2004年よりBATIKのメンバーとなる。バレエピラティス講師としても活動中。


photo: 大洞博靖
松本じろ Jiro MATSUMOTO
アルコール系ガットギター奏者、舞台音楽家。7時6分奈良県生まれ。4歳からピアノ、7歳からヌンチャク、9歳からギターを始める。18歳からパフォーマー丹野賢一の作品に係わりだし、それ以来多くの舞台に音楽、出演、美術、演出、飲酒等で参加する。自身の活動では、国内外のライブハウスや老人ハウス、野外フェス、寺社仏閣、図書館、美術館、居酒屋、少年院等、場所を選ばず演奏中。

[三上満良/宮城県美術館副館長]
ダンサーたちは、仏の化身である鳥の、そのまた化身。肉体と魂をめぐる問いは、宗教の始原であると同時に、ダンスという芸術の根源的テーマでもあることを再認識させられたステージだった。「無常」を語るプリミティヴな仏教説話の表現に、今日的なジェンダリズムのメッセージも感じたのだが、深読みしすぎだろうか。

[細谷修/美術・メディア研究者]
喜び、悲しみ、憎しみ、そして容赦ない変身の狂気。黒田育世による息もつけない身体への集中は、同時に、言葉ならざるものへの挑戦とも言えよう。集団の身体は、我々に踊りの「場所」の意味を幾度となく問いかけてくる。

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