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【「踊Ⅱ」仙台公演を振り返る③・④】 文:ちばりか
2016.03.03

2016.3.3

こんにちは、から研ちばりです。

今日は、風が強めに吹く仙台です。

長々と書き記してきた「踊Ⅱ」仙台公演を振り返るシリーズ、残りを一気にupしたいと思います。

【「踊Ⅱ」仙台公演を振り返る③】
「マクロファージ」メンバーひと足早く劇場入り。
仙台入りしたJCDN水野さん、佐東さん、巡回スタッフが、作品の通しを観る。
退館後、場所を変えてミーティング。

ここから数日後に控えた本番まで、
経験の少ない詩織さんの意図を聞き、音響・齋藤さん、照明・斉藤さんのサポート、水野さんの、忍さんのアドバイスが加わり、

作品が整理され、形を変えていく。

正直なことをいうと、(これで本当に良いのかなぁ….)と、私にはわからなくなっていた。
今まで通り劇場を出てから彼らに見えたこと、感じたことを伝えることが精一杯だった。
ただ、作家であり、出演者でもあった詩織さんが、
専門的部分はテクニカルスタッフに任せ、構成と踊ることに集中できるようになったことで、背負っていたものが軽くなった、

そんな明るい表情になっていたようだった。

とにかく、地元枠作品「マクロファージ」はそうやって劇場での稽古時間外も、リハーサル室や、空いている場所を見つけて稽古し続けていた。
最後まで、諦めることなくやり遂げたことは評価したいと思う。

梅田チームがひと足早く帰った打ち上げの席で、
ひと言ずつ感想を述べる時間があった。

その席で、水野さんをはじめ、テクニカルスタッフも
作品「マクロファージ」に手を差しのべることが果たして良いのかどうか。それぞれが迷い、悩みながらいたことを知った。
じっと見守るという選択肢もあったのかもしれない。
でも、皆 手を差しのべずには居られなかったんだと感じた。

それが果たして、作家のためになるのかどうか。
詩織ちゃんの口から、
「今までつくってきた作品はなんだったんだ?って思うくらい、いっぱい悩んだし、考えた。とてもいい経験になった。また、作品をつくりたい」
という言葉が聞けた。
救われた。報われた。
そして、愛のある現場だったなあ、と思いながら一人一人が語る言葉を心に留めた。

若手作家に何を経験させるのか、ということを考えたとき、
何も云わずに放っておくことだって出来るのかもしれない。
そうやって、
作品を形にしていくために足りないことに気付かせる。
それもアリだと。

でも、「踊Ⅱ」の現場は、どちらかというとそれ、ではない。
舞台が好きで、黙って観ていられない暑苦しいほどの大人がそこにいるから。

目の前に迫る公演でどこまでいくのか。
この現場で学んだ多くの経験が5年後、10年後の彼女彼らにどう影響し、どんな表現者になっていくのか。

ミクロとマクロ。
両方の視点を持ちながら、ともに歩んでいきたい。

*

2016.3.3

から研・ちばりです。

今日は共にから研で活動している伊藤み弥の誕生日でした。

みやちゃん、誕生日おめでとう。

これからも、この街に生きる人たちが生きやすくなるだろうと思うことを、勝手に「からだとメディア研究室」で企画していきましょう。

「踊Ⅱ」仙台公演を振り返るシリーズ、最終回です。

巡回してきたAプログラム作品のこと書きました。

最終公演地、東京での上演が楽しみです。

【「踊Ⅱ」仙台公演を振り返る④】
散々地元選出枠作品のことばかり書いたけれど、
巡回中のAプログラム作品についても書いておこうと思う。

平井優子作品、梅田宏明作品が上演された仙台。
両作品のリハーサルを片隅で観ながら、
「舞台上に存在するカラダ」について考えを巡らせたり、
「やっぱり基礎は大事だ、」と再確認したりしていた。

平井さん作品は、ここにあるのに見えていないなにかと交信するような、目の前にあるのに見つけられず探しているような空気感。
私は子どもの頃に読んだ本、たとえば「トムは真夜中の庭で」とか「霧の向こうの不思議な町」とか、ここではない何処かを想起させた。
また、震災直後、懐中電灯を灯しつつ現実から逃れるように小説を読んで読んで過ごした日々を思った。


「この作品を仙台で上演できて嬉しい。震災がきっかけでつくった作品だったから。」と、打ち上げの席で平井さんが仰っていた。
私も嬉しかった。
平井作品の明かりつくりの時間、彼女の代わりに私が舞台に立って、この作品の光を束の間浴びさせてもらえたあの時間、とても不思議かつ、どこかに迷い込んだようなひとときだった。
平井さん、仙台へ来てくれてありがとう。

梅田さん作品は、耳がキンキンするような音と、4人の女性ダンサーが動く~移動~動く~移動~という流れが延々と続く機械の歯車のような、無機質な印象を持った。
あまり観たことのないタイプの作品だなあ、と。
舞台上に4人もいたらそれぞれの関係性や、感情がちらほら見え隠れすることを、何かが起きることを期待して観てしまっている自分がいることに気付いた。
そういうことを期待して観ていると、梅田さんの作品は見事に何も起きない。


でも、1人でいるのと4人でいるのと異なるように、彼女たちも無関係ではなくて、見えにくいながらも何かしらの関係性が育まれていると感じた。
彼が10年掛けて取り組もうとしているこのプロジェクト、
第一弾を仙台で観ることができて良かった。
遠くから梅田さんを見守っていこうと思う。

2日間で150名以上のお客さまがこの公演に立ち会ってくれた。
終演後、感想を聞くと皆、気に入った作品が異なっていて、
これぞ「踊Ⅱ」ならではだなと。

舞台のオモテも、ウラも
試行錯誤をくり返しながら毎年続いている「踊Ⅱ」。
これからもよろしくお願いします。