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1/29 松山公演レポート  テキスト:高橋砂織(dagdag)
2016.02.18

松山の高橋です。今回、松山公演の制作を、赤松と共にさせていただきました。

踊りに行くぜ!!セカンド松山公演、無事に終わりました。

ご来場頂いたみなさま、ご協力頂いたみなさま本当にありがとうございました。

梅田さんチーム、平井さんチーム、余越さん、岩崎さん、テクニカルスタッフの渡辺さん、齊藤さん、アシダノさん、JCDNの佐東さん、水野さん、インターンの千田さん、霜村さん、松山でダンスを踊り、つくり、観てもらう、という事を実現させて下さりありがとうございます!

そして、松山に滞在してダンスをつくるというこの企画、まるで映画を撮るようにたくさんの地元の方々と関わることが出来ました。
海に近い町、三津浜がお気に入りになった余越さんと度々三津浜を訪れました。

地元のカフェに通い、そこに住む人々とふれあい、住んでいる身でありながら、知らなかった町の姿や、人姿がたくさん見えてきました。

インタビューに協力してくれた画家の海野くんも、この三津浜に住んでいます。

12月に経過発表で水野さんが松山を訪れた時に、この地で海野くんと再会したことがきっかけで、インタビューへの話へと繫がります。

インタビューの様子はこちらです

海野くんはどんな時にもカッコ良く参上してくれて、特有の人間性で周りの人々を惹き付けて巻き込んでいきます。インタビューの場所は、海野くんのおすすめの場所、道後の「どうごや」さんにて。

新たな道後のステキな場所の発見へと繫がりました。そのまま「ワニとサイ」というお店でお酒を飲み語り、夜がふけます。

作品制作の方では、「映像で歌詞を投影したい。松山でだれか紹介して欲しい」と余越さんから要望があり、松山在住の大北くんを紹介します。大北君は、映像の仕事をしながら、大学からはじめたダンスを今も続けていて、ダンスには理解があり、好奇心も旺盛であります。仕事終わりで駆けつけて夜中まで映像編集作業をしてくれ、時にはアイデアを出してくれたりと作業は続きました。

人が人を呼びながら物事が進んでいく。

ダンス作品のクリエーション場所は、幼稚園の跡地のお遊戯場所です。

この稽古場は、地元の人達との共有のスペースの場所なので、毎週この日は使えないということや、イベント開催で難しいと言う日もありましたが、調整していただきながら乗り越えました。一定期間一定時間確保できる場所を見つける事が今の松山では厳しい状態です。

それに伴い、実際の舞台の大きさがとれるアクティングエリア、ある程度引きの状態で見ることができる環境、今回だと映像を投影し実験できる環境、寒さ対策など、課題は残ります。

しかし、無い中で調整し大きな力を貸してくださったのが、シアターねこという劇場の代表鈴木美恵子さんです。

鈴木さんは、演劇を中心にシアターねこで様々な企画をたて運営をされている私達の良き理解者の1人です。

経過発表にも来て下さり、色んな角度から発言して下さいました。

12月の経過発表では、出演者の親御さん、演劇関係者、ダンサー、友達が集まり、意見し合う時間が持てました。新聞社の方も取材に来て告知宣伝にも繫がります。

「映像を使うか使わないか。」に焦点があがりました。たくさんの意見が出る中、答えを出すという目的ではなく、そのまま出演者との交流会になり、余越さんと出演者で再びその話しについて語り合います。

そして、一旦お正月休みへと突入になります。

そして、年明け、再び稽古再開です。

歌を歌う事や、動きについて、そして衣装が加わり、いよいよ大詰めです。

今回長期にわたり、余越さんの滞在場所になったマンションは、

山本家のマンション

ニューヨークに住む松山出身の山本奈美さんと余越さんが長年の知り合いということもあり、マンションを提供して下さいました。

余越さんは、着いてすぐに食材を買い、5分後にはすっかりそこの住人になり、自転車を乗りこなし、少々迷いながらもこの町に馴染み、雪の日も雨の日も稽古場とマンションを自転車で颯爽と往復する日々でした。

本番前には衣装制作の岩崎さんも松山に来られ、ここのマンションに滞在します。

到着前、大きな袋で衣装が送られてきて、期待が膨らみます。

今回、靴の色は赤と早い段階から余越さんが決められていました。

ワンピースや、パンツ、ニーパットから、頭にかぶるもの!なんだこれは!というものまで。

背中にプリントする文字は、モガのスタジオ事務所で仕上げました。

ロゴを決めて、大きさを決めて、大きさも身体の大きさによって変えたり、試行錯誤は続きます。楽しそうに、真剣にこだわりながら、つきつめながら。

岩崎さんが来られ、余越さんもほっとしているようにも感じました。

まずは、着せてみないと!ラフな大きさの数字を持ってみんなとのフィッティングに入ります。

穏やかなのに、バシッとサイズの調整、修正、ディテールの細やかさ、靴の修理まで、手際よく動かす岩崎さんの手に思わず見入ってしまいます。

写真を撮っていると「何撮ってんですか〜〜」(笑と。。

今回アシスタントとして作品に関わる機会を持たせてもらったのが、大学生の松本侑花ちゃんと緒方和希ちゃん

常に、余越さんと共に作品を見ていきます。振りを教えたり、どう見えたかを余越さんに伝えたり、稽古場の管理をしたり、ダンサーの連絡の補助をしてもらったりと全ての面でのサポートをしてもらいました。とても勉強になったと思います。

そして、会舘入り

事前打ち合わせから、4日間共にがんばってくださった市民会館スタッフのみなさんが少々人見知りではありながらも、頼もしくがんばってくれました。

最後には男だけのショット!

ボランティアスタッフでは、出演者の友達やダンススタジオに通う高校生や、去年に引き続きお手伝いをしてくれる大学生

松山を拠点に活動するダンサーの得居幸(ヤミーダンス)さんや宇都宮忍(ヤミーダンス)さんがアナウンスや客席係として、星加昌紀さんが撤収隊長として頼もしく動いてくれます。

ダンススタジオモガの文ちゃん、丸ちゃん、おかずくんも受付やビデオ係で走り回ります。

愛媛大学、松山大学のダンス部の学生さんも最後の最後まで、撤収を手伝ってくれました。

最後は、打ち上げで涙ぐむ出演者

「こんな夜中まで起きていた事ない〜!でも終わるのがさみしいです」

と半分寝そうな目で話す最年少の佐川那奈ちゃん

会の終わりには余越さんへみんなで書いた色紙を渡していました。

出演者は毎日学校と稽古でくたくただったと思います。時には、

「雨が降ったので偏頭痛でこれない。」と連絡があり稽古を休み、

「では本番雨が降ったら偏頭痛で休むの〜〜〜?」と聞いたら、

「それは薬飲みます!」と。。。「じゃ〜薬のんで練習来てよ〜〜」と、

叱咤激励したり、風邪が流行ったり、ケガをしたり、熱が出たり。。。

限られた稽古時間の中で、1人たりとも欠けては困る状況の中

よく踊りました。

ケガの時にも余越さんの気遣いには愛が溢れ、きっと出演者も早く治したい気持ちと、ちぐはぐな身体で、たまらない想いだったと思います。

余越さんは、人で作品をつくり、人とからみながら物事を動かしていく。ものすごい吸引力でした。動けば、波紋がひろがり、たくさんの人が楽しそうに、ときには大変そうな場面も見られましたが、そこに全精力を捧げていく。みんながそのうねりに影響を巻き込まれている。印象でした。
公演本番、作品「B」を観て、私は些細な瞬間から鼻にツンときて、涙が止まらぬ舞台でした。

私は、今から17年前、99年にアマンダ・ミラーという振付家に出会いました。言っている事のほとんどが理解できなく、動くことの良い悪いも全くわかりませんでした。でも、わからないけどたまらなく楽しい。味わった事の無い感覚を味わいます。黒船です(笑

知らないことを、目の当たりにする。できないことが、たくさんある。でも、心と身体が喜んでいる。

出演者、アシスタントの子達にとって、余越さんとの出会いはそんな感覚だったのではないかと思います。

彼らのプレッシャーにはしたくありませんが、今後どうやってこの経験を噛み砕き、自分の言葉の一部にしていき、この世界に存在し続けるのかが楽しみで仕方ありません。

観客の拍手はとても大きく、確かな手応えがありました。

松山という場所は、保守的であり、一石を投じてくれる作家を求めていました。

「あ〜こんな事したら、もう松山来れなくなるよ〜」

と余越さんが漏らした日もありましたが、観客の拍手はその不安を一気に吹き飛ばしました。必ずまたこの場所で会いたいです。

出演者同士、一緒に踊ることなど無い世代が1つの作品をつくり踊る。貴重な時間だったと思います。

中学生の翔くんはいつもどんな時も、ぶれない踊りでした。

みんなから刺激をたくさんもらいました。

ありがとう!!本当にお疲れ様でした!

ということで、長くなりましたが、Bプロのレポートでした。

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そして松山で上演してくださった3つの作品の感想です。

私が、平井さんの感想を書かせて頂きました。

今頃、仙台を終えてきっとまた先へ進んでいる事と思いますが、松山での作品の瞬間です。

そして、梅田さんの作品と、余越さんの作品は、今回撤収隊長でもあり、出演者3名の大学松山大学のダンス部のコーチをしている、ダンサー/振付家の星加昌紀さんに書いてもらいました。

巡回2都市目、松山での様子です。ご一読頂ければと思います。

■平井優子作品『Ghosting〜軌跡の庭』

文:高橋砂織(松山制作/dagdagMatsuyama)

(photo:一楽-ichigaku-)

夜に起きる物語、闇に溶けて消え入る幻の気体のような作品。

あの世の世界とこの世の世界の境界、行ったり来たりするうちにここがどこの世界かわからなく迷い込んでしまう。「声」、「音楽」、「光」、「影」、「映像」、実在するものはないけれど、映画のように色々な情景が五感を通して掻き立てられる作品だった。目の前で起こる事を目で追うというより、じっと目を凝らし、耳を澄ませる。夜露の庭を感じ、誰かの気配を感じ、身体からうまれる軌跡をたどる。

対照的な2人のダンサー

(photo:一楽-ichigaku-)

1人はストーリーテラーのようでもあり、何かを象徴するような存在でもあり、母のようでもあり、動物のようでもあり、妖怪のようでもあり、魔女のようでもある。

両手に持って登場する金色の寸胴鍋のようなものは、ぐつぐつと煮えたぎり、何かの液体が入っているのか、違う世界へと通じるトンネルなのか、墓石なのか。

もう1人のダンサーは、重力を感じさせない身体を持ち、暗闇の中に四肢が浮き上がる

浮遊しているようにも見える。妖精だったり、少女だったり、実体のない人のようにも、不死鳥のようにも見える。前半と後半、2人のダンサーが1つになる。受け止めて立つ女性は、駆け上がる女性を当たり前のように無表情に受け止める。駆け上がったダンサーは、ゆっくりと足を動かす。飛ぼうとする鳥、駆け抜けようとするけれど進めない先、足をかく動きがもどかしく、せつなく印象的で残像として記憶に残る。

終盤、庭が影に覆い尽くされ、瞬く間に闇へと還る。

浸食される世界 漂い流れ消えてなくなる 私もいつか消える

時空を超えて 人が人に出会う。はかなくせつない作品。

見終わった後、今までにない不思議な感覚だった。

実在しないものの存在が大きい

空間の中の身体、隙間からこぼれ落ちる空気感、気配、余韻が残る作品だった。

何も無くなってしまった庭には、そっと次のページが開かれる予感が残る。

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■梅田宏明作品『Movement Reseach-Phase』  文:星加昌紀 (松山在住 振付家・ダンサー)

(photo:一楽-ichigaku-)

4人のダンサーが順次登場。そこ聞こえてくる音。 ドローン、パルス、クリック、グリッチ、ホワイトノイズ、ハーシュノイズ。作品の進行に合わせて、音の聞こえ方、エディット(編集)構築のされ方は、とても気持ち良い。 今回の作品 のような動きを活かそうとすると、生音系やクラシカルな音楽も有りだが、こういった接触不良ノイズ系と合わせても、違和感はない。むしろ今っぽいといえる。 そんな音楽の信号の変化と、照明のシンク ロ率が高く、見事にプログラムされていて、それこそフェイズ(位相)感は半端無く凄まじい。これが最後まで延々続くというやり切り感も、半端無い。 作品自体は非常にデジタルでいて有機的なシス テマティック。途中動物のような鳴き声が聞こえてくる所は、人間が人間に見えて来なかったりする、まるで自由さえプログラムされているような動物もしくは日常生活。圧倒的にシンプルな分、動き、音、照明の細かい変化が、よく見えて来る。視覚と聴覚からの刺激で想像力を掻き立てる作品であった。

(photo:一楽-ichigaku-)

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■余越保子作品『B』  文:星加昌紀 (松山在住 振付家・ダンサー)

(photo:一楽-ichigaku-)

~ささくれた脳達がカラダの外へ巡る旅~

そう感じた。地元作品ということもあり、作品の途中経過も見てきたこともあり、知っている学生ダンサーも居る。ひいき目線もあるがそれ抜きに面白かった。新しかった。この作品に巡回してもらいたい。多くの人に知って貰いたい。特に、コンテンポラリーダンスを敬遠している人に観て貰いたいと思った。

この作品を観て、具体的な内容に触れることもできるが、作品の外側的な感想にする。

最も、特徴的なのはダンス。その動きのボキャブラリーと質感。根底に見受けられるのは、西洋ダンスのテクニックであるが、もはやかつての西洋臭さはどこにもなく、むしろ日本人的なダンスとして咀嚼されている。未成熟というより、ダンスやアートが日常に近いものであるなら、こういうダンスになるのでは。その好例といえる。雑では無い。むしろ純粋なまでに素のカラダが踊っている。

次に目を引くのが、衣装。白、黒、グレー、赤のシンプルながら、背中に書かれた数字。

(photo:一楽-ichigaku-)

おそらく、ダンサーの生まれた年と思う。1990年代から、2010年までという世代。21世紀の台頭を強烈に感じる。1人ダンサーの背中には、足元から肩にかけて年代が並べられており、まるで俯瞰的なタイムマシーンのようだった。その数字の意図は、映像とも動きともシンクロしており、時代を駆け抜ける疾走感、急激な価値観の変化、多様性を想起させる。単なるデザイン、記号ではなく、作品のテーマ性を踏まえてのアイディアとさえ感じた。

そして音楽。エマーソン・レイク&パーマーの「タルカス」1970年代初頭の曲。この曲を知っている人と知らないでは作品の見方が分かれると思うが、デジタルな音楽が主流の現代、電気信号的なPCやスマホの操作音に慣れてきた僕達には、アナログのチープなシンセサイザー音はもはや、クラシックと同等と言える。と同時に普遍性さえ感じるものになったとも言える。プログレッシブロックが正当派ロックからの逸脱であるよう、余越作品の振付のアプローチも、最近のコンテンポラリーダンスの振付から、逸脱しているよう感じた。

映像も、昭和天皇、レオタードを着たダンサーのストレッチ、公園をかける女の子、昭和の日本のアニメ、飛行機の中から撮った瀬戸内海から松山空港に着陸するまでのひと時、等々。

こう書くと映像が強すぎて、作品の、ダンスの邪魔?とも思うが、VHSなざらついた質感も心地良く、舞台照明は明るく、ダンサーの動きもはっきり見えたので、気にはならなかった。

英語歌詞を歌うダンサー、その歌詞の古語翻訳。若いダンサーがさも歌っているような錯覚、しかも英語が聞こえ、見えるのは古語で。このユーモア。

等々、書ききれない事多し。この先の巡回でこの作品は観れないので、想像して下さい。

星加昌紀 (松山在住 振付家・ダンサー)

ということで、長くなりましたが、以上松山のレポートでした。

ここは松山のようで、松山でないみたい。そんな感覚を味合せて頂いた舞台でした。

踊った皆様お疲れ様でした。来て頂きありがとうございました!

まだまだ続く「踊りに行くぜ!!」別の開催地にも足を運び、旅をしながらダンスを味わいたい想いでいっぱいです。

もうすぐ、1ヶ月が経ちます。

それでもまだまだ色褪せない時間です。

またどこかでお会いできますように♡

see you soon

高橋砂織(dagdag Matsuyama)