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巡回公演がスタートしました。初演・札幌公演は、猛烈な吹雪!
2015.01.22


 こんにちは、「踊2」プログラム・ディレクター水野です。
なんと今年初めての吹雪に見舞われた札幌で、巡回公演の初日を迎えました。交通が乱れた中、それでも劇場までたどり着きご来場いただいた皆様、本当にありがとうございました。
Aプログラム川口智子作品「#1 天使ソナタ」、桑折現作品「To day」、Bプログラム原和代作品「ラララ・ララルー」の3作品が、札幌の会場コンカリーニョの舞台で、充実したリハーサルの時間を持つことができ、初演に向かいました。共に作品をつくりあげた現地舞台スタッフ、コンカリーニョ、お疲れ様&ありがとうございました。今からでも、またすぐにコンカリで協働作業がしたい気持ちです。コンカリは「踊2」の初演に欠かせない劇場です。そして琴似名物「ななし」のラーメン、「らっきょ」のスープカレー、たちポンの「ふるさと」に2回は行かねばというノルマ達成に忙しいコンカリ公演です!



[コンカリの音響ボス大江さんと、巡回公演音響スタッフの齋藤さん]
 

私は、踊るわけでもなく、何もしていないはずなのですが、公演が終わる度に肩・首・腰がバリバリになり、体中が岩になる。おそらく、当事者より体に入れなくてよいリキ(力)を入れながら1作品通算6回×3作品=約18回作品を観ることになるからだろうなあ。
初演を迎えるときは、作家も出演者も主催者もスタッフも、皆誰しも緊張と不安と期待で、テンションがマックスに。怒涛のような札幌5日間をふりかえります!


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Bプログラム/原和代と現地札幌出演者は1週間前から、Aプログラム/川口智子チーム、桑折現作品チームもそれに続き順々に札幌入り。3作品のリハーサルをコンカリ―二ョと、曙アート&コミュニティセンターで、交互にリハーサル。

(桑折チーム)

[Bプログラム「ラララ・ララルー」の制作風景]

照明・音響の仕込み、各組の場当たり、通し稽古、修正、演出家からのダメ出し、主催者からの感想や作品への返し、チーム内のミーティング、足りないこと・不要なものは何か試してみる、舞台スタッフの修正―この一連の作業をループ的にただひたすら、金塊を掘り当てるように、作品の行き着く先を求め、繰り返していく。

[桑折現チーム]

そして公演前日、ようやくゲネプロ全員の顔合わせ。公演順も決まりセット替えの段取り稽古も行い、BGMの選曲をする。



(ゲネプロ「#1 天使ソナタ」)

公演当日は、白一色に染まった氷の世界となる。まるで天から初演を讃えられているような、壮絶な荒れ模様の中、コンカリ―二ョでの初演を迎えました!
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Aプログラムの川口智子と桑折現の話を別々に聞いていると、テーマや世界観に共通する点をいくつも発見する。が、見えてくる作品のテイストは真逆といってもいいくらい違う。だから舞台作品は不思議だ。


「To day」初演の感想メモ

舞台上に流れている時間と、客席に座ってみている自分の時間の、一瞬、どちらが夢でどちらが現かわからなくなる。音・体・ダンス・ボイス・舞台美術・照明で多重層が奏でられ、それが中枢神経を刺激される。桑折世界の得意とする演出。チェロの包容力と人間放れしたボイスが、モノクロの世界に絵の具を広げて、日常の不確かさを嘲笑うようにも、意味のあるものだよ、と囁くようにもみえてくるのが面白い。ツルツルと手触りのよさそうな白い服をきた男女は、私であり貴方の分身のように、その世界を浮遊する魂みたい。上演後、客席が明るくなったとき、<日常>という時間の中に、肯定してよいものを見つめてみようか、そんな気分になった。
“「隙間」を見つめていく過程や作品と向かい合う中で、「今日」を見つめれば見つめるほどに「不在」の存在がこちらを見つめ返していた。”リーフレットの桑折現のテキストが頭をよぎる。



(「To day」photo:katsumi takahashi )

(ゲネプロ)
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「#1 天使ソナタ」初演の感想メモ

パンクな舞台作品、最近あまりみることがなくなった、ガツンというやつ。行き場のない思いがなみなみと過剰にあふれている。観ているうちに体が熱くなってきて、マフラーを脱ぎ棄てた。言葉が舞台空間に放たれた途端に、会場の空気がピーンと張りつめる、気持ちがいい。ダンサーの漆喰のような黒目がまっすぐに世界を見ているようで、何も映ってないようで、なんだかその黒目に吸い込まれそうになる。ダンスの高揚感、響く音楽、奏でるセリフが満載になると、想像する巾が拡大し、それはもう舞台作品の醍醐味が来たーっと嬉しくなる。舞台上に希望と絶望が同時に存在する、それは私にとって、とてもリアルで確かなものとして伝わってくる。ことば×ダンス×音楽、それぞれの物言いが、それぞれの表現で競演を始めると、きっと作品世界が二乗になるんだなあ。キレッキレのセッションがもっとみたい。



(「#1 天使ソナタ」 photo:katsumi takahashi )

Aプログラムは、3月まであと3-4公演地で再演を重ね最終地まで、まだまだ変容をし続ける作品となるはずです。「To day」は、次は仙台公演、「#1 天使ソナタ」は今週末、松山公演です。是非、作品の変化を見守ってください。お待ちしています。
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「ラララ・ララルー」

振付家:原さんと戯曲家の林さんの往復書簡から作品を紡ぐ試み。
元になる原のテーマがあって、そこから林がテキストを書き、振付けをし、札幌のダンサーがダンスを踊る。それをみて、またテキストを書き、振付けをし、ダンスを踊る。具体的なテキストから、抽象的なダンスをつくる、抽出する、それをからだというもので表現する。ダンスを立ち上げねばならぬ。三者の協働とせめぎあう。きっと、膨らみのあるダンスがみえてくるはず。



(「ラララ・ララルー」 photo:katsumi takahashi )

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札幌公演上演記録 
Aプログラム
■「To day」
作・演出・構成:桑折 現
振付・出演:松尾恵美 今村達紀
声・歌・出演:山崎阿弥
音楽・演奏:中川裕貴
衣装:清川敦子(atm)
舞台美術協力:木藤純子
「To day」観客アンケートより
■声の個性がとても強烈ですね。タバコの煙の軌跡が美しかった。ボーカルが入るときと無音の時の踊り手の印象(存在感)が変わるのが面白い。
■自分の感覚の拠りどころの場所とか、ヘンな感覚になってきた。
■洗練されている。表現のレベルもダンス、演奏、演出、共に高い。しかしそこに哲学や神の不在がこの国(日本)の根幹にあるように感じ、そのむなしさと悲しさを表現されたように思えた。
■四角ワクの中でもどかしく、息苦しい、やるせない、人って孤独なのか、違うはずでは。


(「To day」photo:katsumi takahashi )
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■「#1 天使ソナタ」
演出:川口智子
振付・出演:辻田暁
音楽・出演:鈴木光介
「#1 天使ソナタ」観客アンケートより
■身体がとけたのかと思った。力強くてドキドキした。
■おもしろかった。人があやうく見えたりたいへん丈夫に思えたりした。
■踊りの静と動、全体の空気感がすばらしかったです。踊りの詩の表現、音のライブ感、とても素敵でした。
■「静」に目を向け、耳を傾けることに新たな楽しさを発見しました。動きの激しさももちろん心動かされるものがありますが、時間をかけてゆっくり変わるものにも注目していこうと思います。



(「#1 天使ソナタ」photo:katsumi takahashi )
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Bプログラム
■「ラララ・ララルー」
作・振付・演出:原 和代
出演:梅村和史/上村優子/柴田詠子/高橋千尋/森三成子/堀内まゆみ/宮脇誠/村田ひろみ/若林泰子
テキスト・ドラマトゥルク:林 慎一郎(極東退屈道場)
衣装:アキヨ(jellyfish)
サウンドデザイン:金子進一。(T&Crew)

原和代 リーフレット テキストより

放っておけば逃げてしまう過去を、我々は記憶と感情とによってつなぎ止めようとする。いやでもやってくる未来を手を束ねて待ち、沈黙の中から必死に自分の足音を探し出そうと転がりながら、バラバラの9人がそれぞれの持つ音をチューニングしていく。それは戻るべき場所、行くべき場所を再確認する為の対話なのだ。

「ラララ・ララルー」林慎一郎テキストより抜粋

「家路」
そして、私たちが目指す場所は、
僕 そこへ行くにはたくさんの分かれ道。
どれをたどっても、距離に変わりはないのだけど。
 その道をたどれば少し遠回り。
 裏を回れば近道だった。
 三つ目の街灯がやっと見えて、白い闇を書き分けてヘッドライトが伸びてくる。
 ギシギシと踏み固められた轍をまたぎきれず、裏へ回った。
 本当は街灯の先にいる諏訪田さんの犬が怖いんだ。
 冬に屋根の下にいっては行けない。でも今夜は大丈夫、音がしない。
 地面から屋根を支えて伸びる太いつらら。
 つららに生えた小さな枝を折ってしゃぶる。
 1年A組、中村先生はまだ怒っている気がする。何も聞こえない。(後略)

(photo:katsumi takahashi )

「ラララ・ララルー」観客アンケートより

■人間の身体を音で表現する“ダンス”をみせてもらいました。
■廃人のダンスを見ているように感じた。自然のノイズとして生まれた都市と人間が構築しきれなかった。都市が崩壊し、廃虚の中で生の気配と記憶がくり返される。廃人のダンス。しかしそれは今私たちが生きているという思い込みの中でくり返している風量の投影であり生かされている間、都市と人間が滅ぶまでこのダンスは続いていくのだと思う。