水野です。こんにちは。巡回公演の終盤、4か所目の福岡公演は満杯の客席に迎えられ終了しました。
春の陽気のようなこの日の博多、舞台熱と合わさり熱い、暑い夜でした。
上演順は、

■福岡地元作品「SLUM」作・構成・振付・出演:山本泰輔/出演:宮原一枝 梅美 髙橋友紀子 柴原あゆみ 生島国宜(美術) 月音

photo:泉山朗土
美術家と女性ダンサーの郡部が舞台作品の中で共存させようとする試み。

■福岡Bプログラム「Turning Ponint」振付・構成:長内裕美/出演:安藤美由紀、福島由美、ぽち、益田帆乃花、山田悠

photo:泉山朗土
長内裕美が自身が出演しない初制作作品。福岡在住のダンサーと4週間制作を重ねてきた。観る人にとったもターニングポイントとなる作品をめざした。

休憩

■Aプログラム再演「4….soku」作・演出・振付・出演:青木尚哉/出演: 柴一平/音楽:熊地勇太/美術:カミイケタクヤ

■Aプログラム「渚の風<聞こえる編>」演出・構成・振付: 黒沢美香/出演・ミカヅキ会議/音:サエグサユキオ

印象的だったのは、後半の好対照な2作品。
青木尚哉作品「4….soku」と黒沢美香作品「渚の風<聞こえる編>」。
「4….soku」は、男性舞踊手2名がダンサーとして磨き研鑽を積んだダンスを高揚感高くみせてくれる。対する「渚の風」は、いわゆるダンサーではない体からダンスをみるおもしろさ。まさに正反対のダンスが並ぶ。

「4….soku」は、初演から2年空いての再演。初演では山田勇気と青木尚哉のデュオだったが、今回、青木尚哉と柴一平のデュオは初。同作品でもダンサーが違うと当然のごとく、みえてくるものが変わる。今回は、2つの雄の身体にフューチャーした演出がたつ。今回の再演を観て、30分の上演時間では物足りないと感じる作品に育っていた。立ち現われてきた後半の世界観、フルバージョンを観たいと思わせる。

photo:泉山朗土

イスに振動が伝わるほどゆるがすクマチの音に身体が応え、客席がヒートしたところで、ミカヅキ会議が客席を沸かせた。
どちらかというと、それほど派手ではない作品。コンドルズが毎年公演している派手好みの福岡では、正直この作品が福岡の観客に受け入れてもらえるかどうか、難しいなあ、と危惧してました。が。。。うけにうけた。コールでは、アンコールをもらうくらいの勢い。客席全体がくすくす笑いというか、含み笑い状態というか、「がはは」という笑い声が起きるわけではなく、舞台と客席が大きな抱擁感に包まれて集中力がひとつになったような状態、というのか。

photo:泉山朗土
 私の前に座っていた中学生らしきグループ、女子3名と男子3名。「渚の風」が始まってしばらくすると、出演のミカズキ会議ダンサーにツボにはまったらしく、笑いをこらえようと終始、体をよじり、それでもこらえきれない模様。”箸が転んでもおかしい年頃”ではあるのだが、何故にそこまで中学生に受けるのか?思わず客電がつくやいなや聞いてみた。「ねえ、何がそんなにおもしろかったの?」「うーん、わかんないけど、歌とか動き方がみたことないものばっかりで、変でおもしろかった」だそうです。彼らは翌日、青木尚哉さんのワークショップを受ける熊本でバレエを習っている美少年、美少女たちだった。ということはバレエの美意識を持ちそういうダンスを日頃やっている子たちが、おもしろがれるミカヅキ会議、あっぽれ。

「笑わせようという意図があって踊る作為的なダンスほどしらける、つまらん。本人はいたって大まじめにやっている、笑わせようなんてとんでもない、そういう体に出会ったとき人は笑える」という定説は誰もがわかっていること。言うは易、である。
だが、これをこのまんま実現してしまっているのがミカヅキ会議なんだろう。
ミカヅキ会議の武藤さんにきいてみた。
「舞台にいるとき客席の様子わかりますか?」
「なんとなくはわかるけど、まったく余裕ないから、ただただ、もう必死でやってます」
このあと東京、京都はどうなるだろうか。
福岡公演は、舞台と客席が最後まで一体となったダンス公演でした。
福岡公演の主催をいただいたAMCFのみなさん、実行委員のみなさん、ニノ、そして作品制作のBプロ、地元に場所を提供いただいた福岡市文化財団さん、ありがとうございました。達成感のある公演にできたのは、皆様のお力です。ありがとうございました。