レポート:千代苑子(JCDN/踊2制作スタッフ)
撮影:GO(go-photograph.com)

札幌公演 会場:生活支援型文化施設コンカリーニョ

1月10日(金)いよいよ雪の札幌から巡回公演がスタートしました。今回の公演、なんと2日前からチケットは売り止め!!年が明けていちだんと冷え込み、北海道の人も驚くような寒さの中、たくさんの方が足を運んでくださり当日は満席となりました!お越しいただいた皆さま、ありがとうございました。3月までの全国巡回に向けて幸先よいスタートをきることができました。

札幌公演のラインナップは4作品。各作品のようすを上演順にご紹介していきます。

まず始めに、再演プログラムとして3年ぶりの上演となる村山華子作品『カレイなる家族の食卓』。この作品はvol.1のAプログラムで制作され、最終地の東京公演は3.11の影響で中止となりましたが、2011年5月に振替公演をおこなって以来の再演となりました。映像や美術を効果的に活かした、まるで物語を見ているような楽しい作品ですが、その奥にある強いメッセージに、村山さんのぶれない芯の強さを感じます。ダンス・イン・レジデンスで村山華子作品と森田淑子作品が滞在制作した和歌山・上富田文化会館の那須文彦さんがはるばる札幌まで駆けつけてくださり、メンバーと3年ぶりの再会を果たす場面も。今回は一度きりの上演となり残念ですが、札幌のたくさんのお客様とともにこの貴重な再演の場に立ち会うことができ、とても幸せな時間となりました。

次にご当地作品として上演するのは、東海林靖志作品『アフタートーク』。やわらかく自由に動く東海林さんの身体はとても興味深く、12月に行われたワーク・イン・プログレスに参加した観客の方からは、「ダンスも曲も変わりましたね。ワーク・イン・プログレスに参加し、作品がどのように変化し完成したか、制作者の思いも知ることができ、ただ見るだけではなく大変よかった。」という声もいただいた一方で、作品のコンセプトやテーマを深めていくという作業の中では東海林さん自身、かなりの試行錯誤があったそうです。今回の札幌公演で他のプログラムの作品を見たり、アーティスト同士交流する中で多くの刺激を受け、たくさんの気づきを得ることができた、と話してくださいました。この経験を活かしたこれからの東海林さんの活動に期待を寄せたいと思います。

休憩を挟み、Aプログラムの森田淑子作品『ヤマナイ、ミミナリ』。これから始まる全国巡回を前に、重要な初演をむかえました。2年ごしで作品制作に取り組む森田さんの想いは強く、作品の構想もいっそう深まっているようす。美術や音楽担当も含めたフルメンバーで札幌入りし、テクニカルスタッフとの最後の調整もおこなって、ようやく初演の幕があがりました。このあと仙台・東京・京都と再演を重ねていく中で、森田さんがどのようにこの作品と向き合っていくのか。期待を募らせ、クリエイション・ドキュメントを追いかけながら、注目していきたいと思います。

札幌公演のラストを飾ったのは、WSオーディションで選出した札幌のダンサーとともにつくられた隅地茉歩作品『Avecアヴェク~とともに』。ややあどけなさが残る中高生の2人が現れトークが始まると、そのかわいい笑顔にお客さんも和みます。ところがこの2人が踊り始めると、劇場の空気はガラッとかわりました。この作品の出演者は全員5年以上の経験をもつダンサーです。次々に登場するダンサー1人1人の迫力、貫禄。私は11月のオーディションのときに一度皆さんにお会いしていたのですが、公演までのクリエイションの中で隅地さんの手によって見事に1人1人の個性が引き出され、さらにうまく調合されて、年齢・経験さまざまな男女6人によるアヴェクの世界が描かれていました。打ち上げのとき、フレーズのすべてを隅地さんが振付けたときのようすを語る表情から、札幌の地で育まれたこの作品や出演者に対する隅地さんの大きな愛を感じたような気がしました。

札幌公演は盛りだくさんの内容であっという間の2時間40分でした。アーティスト自身が綴るクリエイション・ドキュメントでは、制作過程のようすや作品に対する作家本人の想いを覗くことができます。また、PHOTO(Flickr)では巡回公演のようすをどしどしアップして各地の熱をリアルタイムでお届けしていきたいと思います。引きつづき、ご注目ください!

森田淑子クリエイション・ドキュメント
https://www.facebook.com/odori2morita

隅地茉歩クリエイション・ドキュメント
http://ameblo.jp/dance2-seleno-maho/

札幌公演のようすはこちら(PHOTO)
http://www.flickr.com/photos/106107123@N02/