アーティスト・作品紹介
若き男女の距離感が、現代社会に漂う虚無に問いかける。
庭(Yard)をモチーフに落ち葉や硬い土を踏んだりと、足に伝わる感触を参考に浮遊感のあるステップで構成を作っています。
野原のような広大なイメージを持ちながらも、それとは対極に敷地のような閉鎖的な印象も持つこの言葉の意味を消化して、ダンサーを劇場ごと俯瞰して観てもらう作品にしています。
舞台空間の広さを逆手に取ることで、観客と踊り手の間に虚無というフィールドを生み、乾いた肌触りを与えます。
若い男女ふたりの距離感、空気感、身体の関係性などが、現代社会に閉じこもった人の心に触発させる効果があれば、振付作品としての実感を持てます。

振付・演出:田村興一郎
出演:山本梨乃/田村興一郎 
演出助手:長峯巧弥
協力:京都芸術センター
[KAC TRIAL PROGRAM vol.1 DANCE]の関西を拠点とする参加者より選出
田村興一郎 Koichiro Tamura
1992年新潟県生まれ。 高校からダンスをはじめ、京都造形芸術大学にて舞台芸術を学ぶ。 在学中に自身の創作活動を始めるため〈Dance Project Revo〉を立ち上げ、振付活動を展開中。振付作品はダンサーに潜在するものをベースに動きを作り、日常風景や自然界などのあらゆる要素を吸収して独自の観点で切り取る。
また、誰もがダンスを楽しめることを目指す、お笑いダンスユニット〈ムロタムラ〉では関西地域の福祉施設を訪ね、ダンスを発表したり教える活動を行っている。
横浜ダンスコレクション新人振付家部門にて奨励賞(2015)、最優秀新人賞(2016)受賞。


山本梨乃
6歳から貞松浜田バレエ団でバレエを習う。同時にスタジオモダンミリィでジャズダンス、コンテンポラリーを習い、藤井瑞恵に師事。
中学三年生からミュージカルにも幅を広げ、ラヴニールにてロミオとジュリエット、真夏の夜の夢などに出演。
主にバレエ作品を中心に、ここ数年はDanceGraffitieなどコンテンポラリーやジャズなどの作品にも参加。
現在は京都造形芸術大学にて舞台芸術を専攻中。

[乗越たかお/作家・ヤサぐれ舞踊評論家]
男女デュオ。シャープにサクサクやるのではなく、もっちり感のある動き。しかし空間全体を把握した上での様々な演出が光るあたり、動きしか見えない振付家とは違う。田村は様々なアーティストとコラボレーションすると、どんどん新しい面が引き出されていきそうな。

[高橋彩子/舞踊・演劇ライター]
男女が空間や互いを測量するように動く。無機的な雰囲気から次第に抒情性を帯びていくさまが面白い。Twitter より

[ヴィヴィアン佐藤/美術家、ドラァグクイーン]
無限遠方に位置する支点からの、まるで「フーコーの振り子」の球体のように移動し軌跡を残していくダンサー。それは地球が自転していることを世界で初めて視覚化し証明してしまったフーコーの実験の歴史的瞬間を呼び興すものだ。最小限だが極めて硬質な舞台は、この瞬間「ミニマルハードコア」という呼称が湧き出でた。田村は宇宙の仕組み、見えない大きな法則を視覚化してしまった。宇宙の法則を証明するには、微細な動きで充分なのだ。