クリエイションドキュメント [各作品の作品制作の様子を作家・編成メンバー・取材者・共催者が記録していきます]
【中間作品】休業のお知らせ(3月18日)



工場長の中間です。
神戸公演が終了し、もうすぐ一ヶ月が経とうとしています。うちの従業員はみな兼業なので、余韻に浸る間もなく大忙しで出稼ぎへと散り散りになりました。私も別の出演作品のクリエイションが始まったり、疲れが出たのか体調を崩したりしながら、変わりなくやってくる日々をどうにか過ごすことで精一杯でした。

遅くなってしまいましたが、ご来場いただいた皆さま、お世話になった皆さま、本当にありがとうございました。たくさんの方に見ていただけてとても嬉しかったです。



このクリエイションドキュメントを書かなくちゃと思いながら、約半年間(構想から含めるとほぼ1年)運転し続けてきた『月月火水木金金』が終わってしまったことを認めるのがなんだか怖くて、振り返りのようなことをしたくなかったのが正直な気持ちです。

思えば今回のクリエイション期間、楽しかったことはひとつもなかったような印象があります。普段ダンサーとしての活動が主な私は、好きで作品をつくっている訳でも、振付家として認められたい訳でもありません。他の人はどんな気持ちで作品をつくっているのか分かりませんが、少なくとも私は苦しくて仕方がなくて、それでも消化しなければならない事柄があるから作品をつくるという行為に手を染めています。
そんな私なので、おそらく作家としてとても頼りなかっただろうと思います。最後まで作品に向き合ってくれた工員の佐藤と正木、研究員の藤澤に感謝・・・とはいえこれはお互い納得した上での仕事であるので、どんな言葉を贈ればよいのでしょうか。

・・・なんてひねくれた事を言わず素直にありがとうと、記しておきます。

日々の作業の最中、ダンスにとらわれている自分に気付く瞬間が辛かった。
そこから逃げ出したくてこの作品をやろうと決めたのに、思いつく方法すべてが結局ダンスにたどり着いてしまう。ダンスが好きすぎるのも問題だと思いました。
今度はまた別の遠い場所から、全く異なる形をしたこの作品を波に乗せることに挑戦してみたいとぼんやり考えています。それが一体いつになるかは分からないですが、その時はぜひお立会いいただけたらと思います。

その日が来るまで、工場は一旦おやすみです。


photo by junpeiiwamoto

【上野作品】公演を終えて(3月18日)

こんにちは。上野愛実です。
9月から始まったクリエーションもついに終わりを迎えました。
わたしは相変わらずこの町に暮らしながら町の様子を眺めています。
制作期間中に比べて、流れていく時間が早くなったような気がします。

よく見ていたおばあさんたちの中で見かけなくなった人もいるし、チラシの写真で使ったバス停に置いてある椅子も撤去され、残るは木の椅子のみとなりました。いつも気付くのはなくなった後で、様々なものがわたしの知らないところで変わり続けています。見ようとしなければ気づけないことを、時間をかけてずっと見てきたのだと改めて実感しています。

今回の「談話室」という作品は、ある日の夜の出来事でした。
個人的な生活の一片が、公共の場で行われている瞬間を垣間見た時、他人から見れば無意味で不必要だと思われるものは本人にとってどんなものなのか考えたいと思いました。
今そこにあるものを解体し、その断片を見るという方法で、全体像をぼんやり眺めるだけでは気づけないものを探そうとしました。
そして無意味だと思っていた行為こそ、その人を形作る本質ではないのかという答えにたどり着きました。

わたしがこの町で感じてきた儚さや、孤独で寂しい印象も、この町を形作る要素の一つです。
かと思えば、幼稚園生くらいの女の子が、お母さんの自転車の後ろに乗りながら「みんな頑張れ~」とエールを送ってくれる暖かさもあります。
この儚さも暖かさも全てが必要なものです。
町を形作るものは日々変化していきますが、本質は変わらないのだと思います。

今回の制作は本当にたくさんの方にお力添えいただいて、ここまで来ることができました。
何度も制作過程を見に来てくださったJCDNの皆様
短い時間の中付き合ってくださったテクニカルスタッフの皆様
ダンス留学生の頃から見守ってくださっているdance boxの皆様
本当にありがとうございました。
そして私のくだらないけど大切なおしゃべりにそれぞれの視点で意見をくれた二人の演出助手に感謝します。
この経験を活かし、これからも踊りを続けていきます。
次回振付作品は8月、また気持ち新たに頑張っていきます。

上野愛実

【上野作品】公演まで あと2日(2月25日)

上野作品演出助手の中根です。

今日は小屋入り。
昨日のスタッフ見せで頂いたダメ出しと気になる点を再検討して、決定事項にしていきました。決まると早い、なにもかも…
今この時を歩むことができそうです。


劇場ではさっそく照明プランの確認をして、明日の明かり合わせに備えました。
テクニカルが入ってパワーアップ&ボリュームアップした作品となりますように…!
そして見る人には、ぜひ、この時間をたのしんでもらえますように。

本番まで、あと2日です。

中根千枝

【上野作品】スタッフ見せ ふたたび(2月24日)

上野作品演出助手の中根です。

今日は改変を重ねた照明プランの確認の為、照明スタッフの葭田野さんとJCDN 水野さんに通しを見て頂きました。

作品や作中の踊り、パフォーマンスが、どれだけ開けたものになるか。見る人の入る余地、見守ってもらえるような作品として受け取られるか。
その為にできること、必要なことも含めて…、本当にやりたいことをやる。
とてもシンプルなことなのに、その道程がとても険しく感じます。

関東に住む演出助手 定行も新長田入りしました!
本番が、近い…
神戸公演まで、あと3日です。

中根千枝

【上野作品】公演まで あと4日(2月23日)

上野作品演出助手の中根です。

神戸公演まで、あと4日。
どの日の稽古でも振付、動きの細かな選択と構成をひたすら繰り返す日々。大枠として照明や音が決まってからも、振りはまだまだ展開し続けて粘り強く育っています。

作品をつくる間に出てきた様々な解らないこと。
それはなぜ? どうして?
どうやったら。何だったら。
疑問が浮かび、次の試みをして、考える度にまた選択することができる。
そうして出来た足場に、しっかりと立ち上がる踊りがあると思う。

中根千枝

【中間作品】2月2日に送った工場長から研究員への業務連絡メール(2月9日)

偽装作業、そうだね。作業と見せかけてダンス?ダンスと見せかけて作業?みたいな騙し合い(工員にとっても客にとっても)になるかなと入れてみたからその名前は合っていると思う。
<略>
サンバに関しては、かっこいいダンスと同じような挿入の仕方では生きないなと動画を見て感じたよ。ショーダンスの親戚だということに気づけていなかった。こいつらは、しれっと黙って入れることはできない。やっぱり最初の頃に私がやりたがっていた音楽を突然流す「いきなりサンバ」が正解なのだと思う。なぜそれが必要なのかっていうのは、「なぜ」を飛び越えて「必要だから」としか言えないんだけどダメかなぁ。私の、作品に対するフェチというか色みたいなものとも言えるし、カレーに福神漬けとか、牛丼に紅生姜とか、そういうイメージ。

ダンスらしいことをしている私がいてもなお、作業の動きに「ダンスとしか呼べない瞬間」を見いだせることが出来るのかっていう対比は割と前の段階(サンバを試し始めたあたりかな?)からあるよね。
<略>
この設定って一般的に考えたら工員の方がどう考えても不利で(実際の私のダンス的ムーブメントがダンスであるかどうかは置いておいて)、もっともっと作業の「動き」に対して燃えないと勝ち目はない。ダンスムーブメントvs作業ムーブメントで「ダンスとしか呼べない瞬間」を作り出した方が勝ち、とかのゲームにしたら2人も動きに対する意識が変わるかな?作業の動きの解像度が低い気がずっとしているんだよね。モヤっとしてる。それって身体を触って細かく「ダンス的」指示を出せば大抵は解決することなんだけど、それを使わない方法を探してた。

【上野作品】公開リハーサルとディスカッション(2月7日)

上野作品演出助手の中根です。

先日はダンスボックスにて滞在制作中のドラマトゥルク リム・ハウニェンさんによるドラマトゥルク講座があり、そこで神戸公演Cプログラム2作品の公開リハーサルとディスカッションをする場を頂きました。
作品はこれまでのワークインプログレスやスタッフ見せを経て、作品に取り入れた要素そのものをシンプルに打ち出し、より強く提示できる身体が重要となってきています。
この日はディスカッションで頂いた意見や感想から、構成や動きの意図するところが適っていることも分かりましたし、さらに考えて応えなければならない事もまた明確になりました。上演までに作品を見てもらう場が、作品にも振付家にも本当に必要だねと、ディスカッションの後、上野と話しました。
わたし自身も、今回初めて「演出助手」として作品制作に関わっていますが、ハウニェンさんの位置づける「ドラマトゥルク」の仕事や役割も兼ねていると改めて今までの制作過程を振り返り、自身への反省や今後の課題を見出す時間となりました。

昨日と今日の稽古では、ほぼ決定しているシーンの構成を細かく見直し、変更を加えました。新たな位置づけをもって立ち上げるシーンへの試みと、選曲についても考えました。
狙うところはおさえつつ、もっと遠く思いがけない場所まで辿り着く、花開くような!パフォーマンスがますます望まれます。


新長田の街には駅から続く長い地下道と地下商店街があります。ダンスボックスの運営するスタジオも地下にあり、ガラス窓越しにちらほらと行き交う人が見えます。
時々ブラインド越しに外の人が陰となって、窓の隙間を覗き見ていくのがわかります。
見る人の思わぬ興味を引き出して、ぐんっとひき付けるような作品になるといいなぁ。

中根千枝

【中間作品】制服の試作があがりました(1月31日)

私たちの共犯社であるファッションブランド・PUGMENTの今福さんと大谷さんが新長田を訪れました。発注した制服の試作を、東京より持ってきていただきました。
想像以上のおもしろい形状に一同大興奮。あーでもないこーでもないと遊んでみたくてたまらない様子の工場長と工員。

PUGMENTメモより:
『月月火水木金金』における「工場での身体」と「ダンスにおける身体」の対比構造は衣服について考える際に、「制服・作業服」と「ファッション」との関係に置き換えることができる。
今回PUGMENTはダンスの衣装を制作するにあたり、ダンスの為の衣装として考えるのではなく、ダンスと同じ構造を持った服を制作することを試みる。
その際に、「制服・作業着」が本来持っている目的を剥奪し、ダンスの衣装としか言えない状態を目指す。


【中間作品】工場長のつぶやき(1月29日)

「おそらく今が軌道修正できる最後のチャンスのように感じます。」

照明・音響のスタッフさんに作品の通しを見せた翌日、メンバーにこんなメールを送った。
本番まで残り1ヶ月を切って、いよいよ私の余裕もなくなってきた。いつも余裕ぶっこいてひょうひょうとしているので、このくらい神経とがっているのが丁度いいくらいかと思っていたら、結構あからさまに態度に出ているらしい。

ずっと、なにかとても大事なことを見落としているような気がする。作品であることより先に、ダンスでありたいと思う。

【中間作品】工場長のつぶやき(1月24日)

昨日は、劇場に照明の葭田野さんと音響の斎藤さんが来て通し見せと打ち合わせを行った。
私は柄にもなく緊張していたのか、久しぶりに人前で踊って疲れたのか、終わって家で映像を見ながらいつの間にか寝てしまっていた。

寒波に恐れをなして今日は臨時休業としたが、朝起きたら晴れていたのでいつも通り15時に劇場に向かう。地元の大分・別府はめずらしく雪が積もったとのこと。もうどこにも動けないくらいに神戸も吹き荒れてほしい。
ただいま劇場内はメンテナンス中。綺麗になった劇場で踊れるのが楽しみ。

【上野作品】スタッフ見せ(1月23日)

上野作品演出助手の中根です。
今日は神戸公演テクニカルスタッフの方々に作品を見て頂き、打ち合わせをしました。
作品はほぼ決定とするところと、これからまだ…いや、 まだまだ(←こころの声です。)変わるシーンもある状態で、やはり完成ではありません。
おいしいのになんだか物足りない、“何か”が足りないと感じる料理のようで、本番までの時間は材料となる振りを厳選して、さらなる煮込みの時間となりそうです。
あとひと月、確実に積み重ね進んでいくことで、さらに大きく広い場所へ、作品も振付・出演の上野も飛び出していってほしいです。

作品へのイメージや意図することは、問われた時に改めて思い出し、言葉にすることで解ると今日の打ち合わせで思いました。そしてその言葉や言葉以上のことがちゃんとあるのだなあと、動く身体を見て何度も感じています。
本日掲載頂きましたアーティスト・インタビューでは、批評家・竹田真理さんの視点による現時点の作品の印象と共に、神戸公演Cプログラムの両アーティストからの言葉によって、作品のイメージやそれぞれの人となりも思い描き垣間見ることができるかもしれません。ぜひご覧ください!

冬でもわりと穏やかな兵庫県南部でも、明日は雪予報です。本当に寒稽古…!

中根千枝

【上野作品】冬の日(1月21日)

上野作品演出助手の中根です。
年明けならではの明るさも通り過ぎ、冬本番となりました。神戸公演本番も着々と近づいています…!
どうぞよろしくお願いします。

今週末にスタッフ見せを控え、上野作品は具体的な構成を練っているところです。去年末のワークインプログレスを経て、改めて目に見えることを整理して構成しています。
スタッフ見せから本番までの時間がひと月以上あることを考えると、ここで一度すっぱり決めることも必要なのだなと思います。決めることでまた、さらに作品が育つ足場ができていくはず。
まさに今、正念場です。

上野作品の「談話室」から、わたしは静かな冬の日を感じます。思い描くイメージにぴったりのこの時期に上演なんて、うれしいです。突風吹き荒れるここ最近の天気も、テレビや新聞で取り上げられる事故や事件を思うと余計に寂しく辛いものですが、そんな外のことと部屋の中や内(うち)のことは、ふとしたきっかけから出合い結びつきます。
そこで起こっていること、目にすること。その先に何があるのか、それは何なのか。
作中の要素や動きを見るごとに、色々なことを「知りたい」と思ってもらえるような、きっかけとなることを願っています。

中根千枝

【中間作品】先週のはなし(1月19日)

先週末、劇場では「国内ダンス留学@神戸」4期生のショーイングが行われていました。
私も1期生として応援に駆けつけ、いや、いち観客として、ダンスファンとして純粋に楽しみました。前説から緊張感あふれる空間で、グッと身が引き締まる思いでした。踊りにいくぜの神戸公演を約1か月後に控えたいま、実際に自分の作品を乗せる舞台で他の作家のダンスを見ることができて良かったです。

13日はこれまで拠点にしてきた新長田を抜け出して京都へ出張。
お稽古場、安くてびっくりしました。
15時から21時までガッツリお仕事。新しいシーンも生まれました。

中間アヤカ

【中間作品】工場長のつぶやき(1月11日)

うちの従業員はほんと提出物ださない。

【中間作品】ひと段落と、ご報告(1月8日)

今日は全体での作業を休みにして、工場長1人で自宅作業。
モノによって振り付けられた工員の動きをスコアに起こし、そのスコアから新しく動きを作り工場長の仕事とする取り組み。

これまで没頭してきた「作業」、「共同作業」、「超共同作業」と私たちが呼んでいる動きがあるのだが、この間やっとそこから離れて新しい仕事(シーン)に取り掛かった。「見られることをやめた、監視される身体」へのアプローチがひと段落したので、これからは「踊るものたち自身の楽しみ」、「自身の姿を誇示するための踊り」、「見られる身体」をキーワードとして作業を進めていく。

最後にひとつご報告を。
これまで『月月火水木金金』作業中の服装は当社規定によりそれぞれ動きやすい自由な格好としていましたが、2月の工場見学会(神戸公演本番)に向け、このたび東京のファッションブランドPUGMENTさんと共犯関係を結び、制服を発注いたしました。
装いは、身体の動きにとって重要な要素のひとつです。皆さまにお披露目できる日がとても楽しみです。

中間アヤカ

▼PUGMENT website
http://www.pugment.com

神戸Cプログラム進行中!!

DANCE BOX 横堀です。

新年あけましておめでとうございます。
今年もどうぞよろしくお願い致します。

「踊りに行くぜ!Ⅱ <神戸公演>」も今回で2回目を迎えます。
今回は、巡回2作品に加えて、地元作品として2作品を上演。

地元作品は「国内ダンス留学@神戸」の卒業生による作品です。
ここ新長田をベースに作品制作が進行中。
昨年末にはワークインプログレスを実施。
少しずつ作品の片鱗が見えてきました。

日本のコンテンポラリーダンス・シーンにおいて
非常に重要な業績を残し、今もなお新たな境地を開拓し続けている
山崎広太、梅田宏明作品との同時上演。
腕がなりますね。どうぞご期待ください!

【中間作品】仕事はじめ(1月5日)

あけましておめでとうございます。
年末年始はそれぞれの休みを過ごし、本日より仕事始めでした。
午前中から4時間メンバーと一緒に作業をした後、私はバイトに行って小銭を稼ぎ、また劇場に戻って1人で作業しています。

今日は、前回の作業までに行っていたことの再確認から。地味な仕事が続くので工員の2人が飽きてしまわないか気になるところですが、その中からようやくスリルある瞬間が生まれそうな予感です。時間にして4秒ほど。すでに大枠を構成しなければならない時期だと頭ではわかっていても、どうしても細かな部分からしか立ち上げることができません。1年くらいかけて1時間くらいの作品にしたいです。(やめてくれという声がどこからか聞こえてきますね)

いま、三浦雅士さんの「身体の零度 何が近代を成立させたか」という本を読んでいます。
研究員の藤澤が大学の図書館で借りてきて、その中の「体育」という章をコピーして休みの間に送ってきてくれたのがきっかけでした。とても面白いです。ダンスの歴史はもちろんバレエにも多く触れている内容なので、読んでいると、イギリスのバレエ学校に通っていた頃の歴史の授業を思い出します。学期毎に論文を書かなければならなかったのでたくさん勉強したはずなのですが、今となってはさっぱりです。

中間アヤカ

【中間作品】仕事納め (12月23日)

年内の作業は昨日で最後。
『月月火水木金金』というタイトルからはブラックな企業を想像するかもしれないが、うちは完全なるホワイトである。

それから忘年会も済ませた。新長田のとある中華料理屋に入ったのだが、本日のおすすめメニューに「シェフの気まぐれコース」なるものがあった。内容どんなんですか?と店員さんに聞くと「ちょっとわかんないすね、気まぐれなんで」と言われ、とりあえずそれを2人前と、追加で何品か注文した。前菜から始まり、餃子や創作中華らしいメニューが運ばれたあと、小さな鍋に入ったスープがやってきた。茶色くてグツグツと煮立っている見た目が不思議で、思わず「すごい、これなんですか?」と聞いてしまった。もちろん答えは「ちょっと、わかんないすね」だった。そういう演出なのかもしれない、なんたって気まぐれコースだから。

工場長の中間と研究員の藤澤は仕事納めの翌日も出勤。休日出勤だが、手当はない。
ダンス批評家の竹田真理さんによるインタビューを受けた。竹田さんとは3年ほど前から知り合いで、これまでに私が出演したり振付したりした作品を多く見てくれていることもあり、安心して話をすることができた。

中間アヤカ

【中間作品】ワークインプログレス (12月22日)

先週12月16日に、神戸公演Cプログラム2作品のワークインプログレスを行いました。

JCDNの水野さん、DANCE BOXスタッフの皆さんのほか、昨年の踊2神戸公演の振付家秋津さやかさん、共演したダンサーの2人、「国内ダンス留学@神戸」4期生や卒業生など大勢の方が見にきてくれました。まだまだ納得のいかない、形になりきれていない部分をお見せして感想をもらうのは心苦しい気持ちもありましたが、自分にとって、作品にとって大事な時間だったと思います。

今やりたいと思っていたことは全部やれました。その上で、こうでなければならないと思い込んでいた部分が意外とそうでもないということに気づいたり、一度あきらめたシーンがやっぱり必要だったと思い直したり、実際にお客さんの前でやってみることで見つかったことが多くありました。

「おもしろくなかった」とはっきり言われました。とても悔しかったです。これまで20年間ダンスとともに生きてきて、そう言われたのは初めてかもしれません。メラメラしています。

中間アヤカ



写真:岩本順平

【上野作品】12月16日 ワークインプログレス(12月20日)

初めまして、上野作品「談話室」演出助手の中根です。

先日は新長田のダンスボックスにて、神戸公演Cプログラム両作品のワークインプログレスがありました。
JCDN水野さん、昨年の神戸公演で作品を発表された秋津さんをはじめ、
ダンスボックス関係者の方々に多くおこし頂きました。ありがとうございました。

この日は今出来ているシーンをつなげて、一部即興を含む、音や照明などテクニカル要素はほぼない制作の現時点として作品を見て頂きました。わたしには繰り返し稽古場で見ていた動きが、ごっそり必要ないのでは…? と思う位、今まで見たことのなかったその時々の身体やパフォーマンスの変化が見えました。
稽古と変わらず印象に残る動きや部分は、稽古当初の動きが立ち上がった時と比べて、振付・出演の上野に馴染んできているようでした。
作品を公演までに見て頂き、感想や思ったことを交換し合う機会を頂くことで、作品の問題としていたこと、これから作品が向かう方向がより明確に定まったと思います。

出ている動きや大切にしたい要素は、今はまだそれを見てすぐわかるものではありません。
言葉に出来ない、けれどあるんだ! とは言える、形のないことも散らばっています。
盛り沢山のやりたいことだらけの中から上野はもちろん、わたし自身も、
伝えたいこと、その場を、見届けてもらえるよう試して選んでいきたいです。

中根千枝

【上野作品】談話室について(12月19日)

前回のつづき…

実はバス停で考えてたようなことを、町の談話室でおばあさんがひとりタバコを吸っているのを見たときに考えました。
あまりにもくつろいでいたので、ここはあなたの家か!と思ったからです。
それから他の談話室も通るたびに意識して見るようになりました。
家の中の延長のように利用する人たちが結構いることに気づきました。それに興味惹かれて「談話室」という作品をつくろうと思ったのです。
観察を始めてから、わたしは自分自身のことを考えずにはいられなくなりました。わたしは談話室の椅子に座って、自分の過去のことを考えました。

「談話室」は、生活の隙間に立ち寄る場所なのかもしれない。
繰り返し続く日常の中で、麻痺してしまった、慣れてしまった感覚に隠れているものを、掬い出すことのできる場なのかもしれない。
たくさんの人を見てきましたが、今回はこの町に住むおばあさんたちと私の過去を重ね合わせ、「孤独な身体」についてじっくり考えてみようと思っています。

上野愛実

【中間作品】本日の作業(12月15日)

1週間ぶりの作業。

前回、「これいけるかも」と思っていたシーンに確信を持つことができた。

美しい流れをみると、たまらない気持ちになる。私の言う「美しい流れ」というのは音楽的なことなのかもしれない。ノったり、あえて遅らせて合流したり、ときには休符があったのち、待ってましたと華を持ったり持たせたり。そういうことが、人間のからだの動きによって視覚化されるととても面白い。そしてそれらを無意識に近い状態で選択できるようになるとさらに良い。

明日は第1回目の工場見学(ワークインプログレス)が行われる。

中間アヤカ

【上野作品】 神戸公演チラシ完成!(12月13日)

上野愛実です。

ついに神戸公演チラシが完成しました!

振付・出演ともに私なので、イメージ写真をと言われ、とりあえず散歩に行きました。

写真は近所のバス停です。

利用者が少ないため、備え付けの椅子がありません。

けれどお年寄りが多いので、バスを待つための椅子が近所の家から寄せられているようです。

普通は家の中にある椅子が道に置いてある風景は少し不思議で、日常と非日常の隙間を見ている気持ちになります。見ることのできない誰かの生活に触れているような感覚です。

兄弟はいるのか、なんの食べ物が好きか、窓からどんな景色を見ていたのか…と様々に想像しながら、その人が大切にしていることはなんだろう?と考えました。

この写真を撮りに行ったとき、新しく銀のベンチがいくつかのバス停に増えていました。そのかわり椅子は減っていました。別のバス停に行ったのか、捨てられたのか、もしくは家に戻ったのか…これ以上はもう触れることができないようです。

【中間作品】サンバについて(12月13日)

サンバのことを考えている。

奴隷労働者階級の音楽として始まったサンバは、もともとは生活そのものを題材としたもの、人種差別や政治体制への批判などを中心に歌われていた。現在のサ ンバショーにおける振付は欧米のダンスショーの形式を取り入れたもので、サンバの踊りはあくまでも即興を醍醐味とするものらしい。

研究員の藤澤が、大学の図書館でサンバについて書かれた音楽指導書を借りてきてくれた。
コール&レスポンス、ソロが行われている間は周りのみんなで応援する、かけ声の「オパ!」、ひとりずつ2章節遅れで参加し層を厚くする、などなどその仕組みがたいへん面白い。本に書いてあった好きなフレーズをご紹介します。

・旬の味覚サンバ

・サンバは場所を選ばない

・誰かが踊り出すのも時間の問題

・ノリとナマリ

・サンバは心をときめかす

中間アヤカ

【中間作品】 日報@城崎国際アートセンター (11月27日)

私たちは作業(ダンス作品の創作においては「稽古」と呼ばれる行為)を行ったら「作業日報」を、メンバー間で共有したいことや個人的なつぶやきやメモ代わりとして「業務日報」を書くことにしています。
この日報たちは最終的にファイリングして2月の本番のときに自由に見ていただけるようにしようと考えていますが、一部をこのクリエイションドキュメントでも公開します。
以下は10月26~30日の間、城崎国際アートセンターに滞在したときの日報の一部です。

中間アヤカ

【中間作品】 月月火水木金金 (11月24日)

はじめまして!神戸公演Cプログラムの中間アヤカです。
上に書いた漢字の文字列は作品のタイトルです。「げつげつかすいもくきんきん」と読みます。長ったらしいので、「げつげつ」と呼んだりしています。2月、みなさんにお披露目できる日を楽しみに大切に育てていきますので、どうぞよろしくお願いします。

作品のメンバーは、工場長の中間アヤカ、工員の佐藤健大郎・正木悠太、そして研究員の藤澤智徳です。私たちは、振付家、ダンサー、ドラマトゥルクという、ダンス作品の創作において当たり前に使われている肩書きや組織図のようなものを持たずにダンス作品をつくることに挑戦しています。この作品の構想は、私が以前働いていた神戸老舗の瓦せんべい工場で「ダンスとしか呼ぶことのできない瞬間」のある身体の状態を目撃したことから始まりました。そこで働く人びとは、振付家やダンサーなどという名前を持たずして「振付」を行い、「ダンス」を踊っていました。いや、そもそも誰も気づかないうちに「振付」が行われ、結果的に「ダンス」という現象が起こっていたと言うべきでしょうか。労働におけるルーティーンというリズムの中で、彼らの身体はまるで喜んでいるように見えました。
どんな行為もダンスと呼ぶことの出来る素晴らしい時代です。では逆に、ダンスとしか呼ぶことのできない行為とは一体どのようなものなのでしょうか。それは誰もが気づくような大きく立派なものなのか、よく見ていてもうっかり通り過ぎてしまうような小さく他愛もないものなのか。もしかすると、ダンスを見ることができるなんてただの思い込みで、私たちは自分勝手に「ダンスを見た!」なんて決め付けて楽しんでいるだけなのかもしれません。

ダンス、ダンスと言い過ぎて訳が分からなくなってきました。そんな20分間になればいいなと願います。

中間アヤカ

【上野作品】はじめまして(11月18日)

はじめまして。踊りに行くぜ!!Cプログラムで作品を発表します、上野愛実です。

10月から稽古がはじまり、先日コンテンポラリーダンス@西日本の本番を終えました。

「孤立する身体」の模索と、どのようにこの空間に身体と椅子たちは存在するのか、が大枠のテーマでした。

今回の舞台で1つ方法を貫くことができ、発見も課題も見つかりました。そこからさらに稽古を重ねている真っ最中です。

この1ヶ月間は様々な人に作品を見てもらえる機会があり、また城崎へのレジデンスでさらにブラッシュアップされ充実した日々となりました。

この時期に1週間作品のことだけを考えられる環境と時間をいただき、作品も次のステップへ進めたように感じています。

2月の本番まで、日常生活も含めて丁寧に制作を進めていこうと思います。

上野愛実