札幌ワークショップ・オーディションで選出した8名の出演者と、山田勇気のリハーサルを開始して9日目となる12月初旬。「踊りに行くぜ!!」Ⅱ札幌公演の主催者となるコンカリーニョ斎藤ちずさんが、山田氏のダンス観、今回制作する作品について話を聞いた。
日時:2012年12月4日
場所:あけぼのアート&コミュニティセンター
聞き手:斎藤ちず (NPO法人コンカリーニョ理事長)
— まずは山田さんが今年Bプロに応募した動機を聞かせて下さい。
そうですね、僕は札幌出身なので、札幌で札幌の人たちと作品をつくってみたいというのもありましたし、あとは去年、青木尚哉さんの作品でダンサーとして「踊りに行くぜ!!」Ⅱに参加した際のツアーやクリエーションの環境、人との出会いが結構楽しかったんですよね。
— 去年来た時?
札幌もそうだし、JCDNの人たちがやっていることとか話を聞いて、もう一回やってみたいな、と思ったんです。
— なるほど。この「踊りに行くぜ!!」Ⅱっていう企画にもう一回参加してみたいと?
そうですね。
— 具体的にどういうところで興味深いと思いました?
つくる環境にものすごくこだわっているというか。僕の場合、新潟(Noism)にいた時は、四六時中の環境があったけれども、東京出たあとはそういうのがほとんど無くて。でもそんな中でも東京で作品をずっとつくりたいと思っていたんですが、それが去年の「踊りに行くぜ!!」Ⅱで青木さんとある程度の完成度で出来たと思うんです。でそれを後押ししてくれている受け手の人たちが各地にいて、そんなことは知らずにいたので興味深いと思いました。あと、自分もそういう環境の中で作品をつくりたいなという想いがどんどん湧いてきました。
— 稽古場が提供されることが、東京だとなかなか手に入れにくいっていうこと?
そうですね。
— 今回敢えてAプロではなくBプロっていうのは?
Aだとすごくつくりたいことをすごくつくりたい人たちとやりたいんですね。そうなると別に今じゃなくていいんですよ。それは勝手に自分発信で、期が熟した時にやりたいな、という感じで。企画に乗るということではなくて。Bプロではすでにあるプラットフォームに乗って貢献できるのではないかなと思って。
— 貢献っていうのは札幌っていう土地に、ってこと?
それもありますし、札幌のダンサーにもです。あと、札幌出身でこんな奴がいるぞ、みたいな。
— 「帰ってきたよ!」みたいな?
そうですね(笑)
— 踊り始めてどれくらい?
大学生だから18歳からですね。
— 作品つくり始めたのはいつ?
質うんぬん、で言わなければ…
— 言わなくていい、言わなくていい(笑)
大学2年からつくってるんで、踊り始めと同じくらい
― 今回の作品は何本目くらいなの?
数えられるかな、、10~20くらいかな。
— 大学の頃からつくってきて、どっかで作品そのものに対する向かい方がぐっと変わった転機ってあるの?
えーと、2回ありますね、一回目は、大学終わった後にカンパニー(Noism)に入ってダンサーとして働くようになった時に、ダンス作品をつくる上であまりにも自分の身体がわかっていないな、ということを感じた。それまでは、単なるイメージでつくってきたというか。。。
— うんうん、学生の頃はってこと?
学生のころは。それはいかん、なんか行き詰まりにみたいのがあって。で、プロのダンサーとして活動をしているときには、全く作品をつくらなかったんです。それが3年くらいあって、そこから今ならやっていいかなと思って、つくり始めたのが1つ転機としてありました。そこは動きの種類が増えたとか、質が上がったということで、作品のつくり方自体はそこまで変わっていない気はするんです。
それから、Noismを辞めて、東京に出たときに、武道家の日野晃さんと出会って、そこでまた踊りっていうものが、ガラッと変わっちゃって。
— ふ~ん。
身体からつくるっていうか、ダンスがダンスだけで面白いっていうか、そういうことをやりたい。そういうふうに思ってからは、これが2作目くらいですね。
— いま、身体からつくるっていうことを聞いて、ダンスだから当たり前じゃない、って思ったんだけど?
たしかにそうですけど、あまり観念的ではないものをつくりたいとは思っています。意味から振りをつくる、意味のあるような振りをつくるのではなく、意味を内包する身体使いから動きをつくって行くと言うか。
— んー、あえて排除してるってこと?それとも、もう意味のあるような振りは出てこないってこと?
いや、そんなことは無いと思うんですけど。ひねくれたと言えばひねくれたのかもしれないけど。
例えば、悲しいジェスチャーというものではなく、全然違う、日常じゃない動きから、感情みたいなものが生まれてくる瞬間があるんじゃないかなって。
— アプローチの仕方が変わったってこと?
それはありますね。始めになんかテーマがあって、身体と動きとでいろいろやっていく中で、なんか見えてくるっていうか。完全にどっちかじゃないんですけどね。テーマが全くないところから、つくり始めるわけじゃないんですけど。
— そうですよね、今回も7月にこういう作品をつくりますっていうのをいただいて、始まったわけですからね。
そう、今回それが苦手だから、どうしようかなと思ったんですけど。いままで、作品が出来た後にそれを見て、自分で感想を書いたりしていたんですが。
— ヘー。自分の?
そう。自分の作品を見て、そこからみえることを文章にしたりするんですけど、それはつくってる最中にやることもあって。それがまたフィードバックして作品に影響したりすることもあるんですよ。
— なるほど。
だから、始めにその文章をつくってみようと思ったんですよ。なんか自分の文体みたいのがあるので、それで書いてみて、そこからなにか世界観が生まれてくるかもしれないと思って。でもその言葉を直接身体でやるっていうよりは、今の段階ではそれを置いといて、身体でいろいろ試していて、これはこの作品になりそうだなっていう要素を探している。
— ・・・なんかたよりないな~(笑)オーディションで選んだダンサーとの出会いで、いま新しい発見みたいのはありますか?
いろんな人が集まってくれて、みんなで同じことをやって、いまはコミュニケーションをとっているっていう段階ですね。振付家とダンサーで築くことっていうのは、日常で友達になるっていうことではないと思うので、だから、僕は身体を見て、舞台にどのように立つのかなというのを見ていますね。
— ふーん、なにか見ている中で印象的な発見というのはあったりします?
全部ですよ、初めて会う人がほとんどなので。だから、オーディションの時に見て、僕が感じて、選んだあたりが合っているって感じですね。
― それぞれの活かし方みたいのは見えてきていますか?
それは見えてきていますよ。それぞれバックグラウンドが違うし、年も違う。出ることに意義がある、というだけの舞台にはしたくないので、それぞれの得意な踊りを舞台にのせていいかどうかは考えますよね。例えば、踊らないで立っているというのが、その人にとってフラストレーションかもしれないけど、それを選ぶことがあるってことも含めて、彼等が舞台にどういう風にいたらいいのかっていうのは見えてきていると思います。
— ふーん、なるほど~。 今回の作品は最終的にどうなっていくかしら、今の見通しみたいなものは?
今の段階では、作品性から作者が見えてくるのではなく、作品から個々人が見えてくるようにしたい、そうなっていく予感はあります。
— 個々人、というのはその人の素の部分、人生みたいなものっていうこと?
う~ん、なんか取り払った素のその人。なんだけど…素っていうと誤解があるような。。
例えば第一印象で、その人の生きてきた、生きていくであろう、行動を決定するその信念みたいなものが見たい。だからその人が過去やってきたこととか、今その人がやっていることが上手いとか下手とかでもなく、今そこに存在している確かな感触のようなものを、舞台にのせれたらと思っています。
自分が他のダンス作品を見ている時は、そういうところをものすごい見てるんですよ、多分(笑)今、そこにいるっていう。瞬間を。
— 想像するっていうこと?踊ってるの見てるだけで、この人がどんな人か?なんて絶対分かんないと思うんだけど、、、想像させるっていうこと?
なんか身体がただ在るっていうことまで落とし込みたい。
— 身体は在るよ。(笑)
(笑)ありますよね、いや、それは分かってる人は分かってるけど、以外と本当に気がつくことってあると思うんです。
— ふ~ん…
舞台を観てわかるという。それが今回の作品でやれるんじゃないかな、と思ってるんです。
普段は、意外とその人のことみてないっていうか、日常で。顔は見てるし、今日話したことはあるし、用件は済むし、みたいなことろでコミュニケーションとってるけど、なんかこう裸で、服を着ている着ていないじゃなく、何もないところで言葉もなくみせたい。
— それで伝わることがあるんじゃないかと?
うん、あると思います。で、それ自体がけっこう綺麗なんじゃないかと思うんです。それがみえてきた時に。
— 今聞いていると、それってこの作品に限ったことではないようですね。今、山田さんがダンスの作品をつくるときの方向性ということかな?
はい。そうですね。
— 今回の「Endless Steps SAPPORO」に限っていうとなにか特別にありますか?
う~ん…今は作品をつくるってことが、そんなに簡単に済まされないなっていう気がするんですよね。お金をとって見せることは。美しければいい、みたいなところに行きがちな自分はいるんですけど、なんかそうじゃなくて。感動して欲しいんですよ。
— (笑)それは分かってるよ! 今回、この作品で何をもって感動してほしいですか?
ヤバい、怒られる~(笑) 「Endless Steps」続いていくんですよね。何かこう広い先を見て生きていけないかな、と。いろいろ大変なこととか今ありますけど、今を否定する訳じゃなくて、そういう意味でダンサーに今そこにいて欲しいというのがある。で、それが一番大事で、それ突き詰めていくともうちょっと逆に広い視野で100年後、200年後、1000年後も続いているんだと思うんです。形を変え、品を変え、営みが。それが今の常識だとあり得ないような価値観なのかもしれないけど。100年後、1000年後、もし人間がまだ生きていたら。
— いや、みんな生きていると思ってるんじゃない?
思ってるか…そうか、そうですよね。
— まあもちろん自分は死ぬだろうけど、人は基本的に生きていると皆思ってるんじゃない?
人類はいなくなると思っている?
いや、思ってない、思ってないけど。ダンスを媒介にして、想像力がそこにぐっと膨らむような瞬間が、できるんじゃないですか。それこそ、本読んだり映画観たり、舞台観に行ったりすることで。日常の時間が解き放たれた時に。まあ日常のことをやっていて面白いっていう舞台もありますけど、僕は広い時間をのせたいんですよ。
— ふ~ん、、、、なるほど。それは普通に生活してたらあんまりないよね。考えようと思っても、なかなか考えられないよね。
うん、考えられないし、考える必要ないですしね。
— じゃあ最後になにか言い残したことはありますか?
札幌との関わりで言ったら「踊りに行くぜ!!」Ⅱがやろうとしていることと繋がる形で、今回僕が札幌の人たちと札幌でやるっていうのは「踊りに行くぜ!!」Ⅱにとっても僕にとっても、札幌にとっても、ひとつ始まりで、ここからまた広がっていくことが出来たらいいなと思っています。
— 山田さんにとっての広がりというのはどういうことですか?
僕が作品をつくって地元のダンサーと関ることで彼等と知り合い、繋がりができるということと、そこにいる人たちを知るということ。なんかね、今ねえ、知るっていうことがけっこう大事なんじゃないかなって思うんです。
— ふ~ん、、、知りたがりボーヤだ~!
影響していくから、ただ名前を知っているだけじゃなくて。知識うんぬんではなく、実際会って時間を過ごす、なんか同じことをやってみるっていうことで、それを経たことで何か違うのではないかと。
そういう意味で影響を与えたいし、自分も影響を受けたいし。だから教えるということではないと思うんですよね。こういう人がいると、いろんなことがあって、今こういうことがやりたいと。それが負でも正でもいいんですけど。影響を与えられたらいいなと思っています。
— ありがとうございました!! OK !! いい作品、期待しています。
はい。