踊りに行くぜ!!

報告するぜ!!

2015年2月3日
踊りに行くぜ!!セカンド Bプログラムの現場 松山編

2015.1.25
松山にて
テキスト:國府田典明

巡回公演2つ目、四国愛媛・松山公演を見に行ってきました。毎度ながら距離感から。東京羽田8:30発の飛行機で10:00に松山空港に到着。空港から中心部へはバスで20分程で近くて便利です。市街地の山の上に松山城、麓の堀に囲まれた公園内に、会場の松山市民会館があります。

公演直前に、松山公演制作とBプログラムの進行を担当するdagdagの赤松さん、高橋さんに話を伺いました。お二人はダンサーでもあり、松山のコンテンポラリーダンスに携わってこられました。松山は1998年にダンスウェーブという市の事業があり、国内外の作家を招いて市民向けにワークショップを行う等、いち早く地域に対してダンス芸術が取り入れられたという事です。前企画の踊りに行くぜは2002年から開催。現在は大学を中心にダンスが盛んで、ジャンルを横断して舞台にあがる人もいるそうです。(松山のダンス事情について、こちらに水野さんが記載していますご覧下さい。

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<赤:赤松美智代さん 高:高橋砂織さん>

ー改めて”セカンド”の企画をやってみていかがですか?

高:踊りに行くぜ(ファースト)は、公演を受け入れる企画だったので、挑戦しやすかったです。
セカンドになって、受け入れる方法もその土地のやり方で良い、といわれたものの、その事自体どう探っていくかという段階でした。それは毎回違うとも思うんですよね。経験しながら見えてきたというのが実際のところです。

やって良かったと思ったのは、これまで「滞在制作」という事がなかったんですが、今回、幼稚園跡地を利用している演劇の劇場のシアターねこと関係ができてレジデンスを実践できたし、必要なつながりを作る事ができて良かったと思っています。

こういう事が出来れば良かったという点では、例えば、衣装だったらこういう人がいますよとか、すぐナビゲートできる準備ができていれば、もっと作品も充実したかもしれません。

赤:振返ってみると、もっと制作現場を見に行っておけば良かったと感じています。舞台を借りたり、お弁当買ったり、も大事なんですが、もう少し優先すべき事が何かを考えても良かった。

高:作品の内容にもダンサーにも、私たちがしっかり関わる事があってよいと思っていて、次はそうしたいですね。今回やったからこそどう入っていけるか、その可能性がわかりました。次は、作品が決まったらまず作品の話をがっちりしたいですね。

國:この踊りに行くぜセカンドのBプログラムは、いかにその土地で作品を”つくるか”という企画ですよね。作家のアイデアと地域の人をつないで実現させるプロジェクトなので、難しい事が多いと思います。実際にBプログラムの受け入れ側も模索状態だと思うんですよね。各地それぞれどういう感じなのか、共有していく事も大切な事ですね。

ーBプロと合わせてAプログラムを公演するんですが、この事についてはどのように受け止めていますか?

高:今回の川口さん、目黒さんの作品は選考会のプレゼンテーションの時点で松山にぜひ呼びたいと感じていました。作品性も違っているのも魅力的でした。

赤:強度のある作品を地元の人に見てほしい、そういう願いがありますね。作っている過程に関わっている事も貴重な事なんだ、という事も伝えたいと思っています。

高:松山は地理的にも外に出にくい”島国”なので、外になかなか見に行かない傾向を感じています。一歩出るのに時間がかかる。だからこそ、この企画のように、作品を連れてくるパイプが必要だと思っています。作品を見て、こういうのもアリなのか、という刺激を与えたい。自分が作りたい、見たい、踊りたいという知見を広げるような事を仕掛けていきたいです。

ーなるほど。見に来る地元のダンサーのためにも、Aプロ・Bプロが同時に公演される事は大事ですね。

赤:それは本当にそうだと思う。(普段触れられないものを)まず、見てもらいたいです。

高:Bプログラムに出ている人たちも、Aプロの作品を見て刺激を受け、その上で自分がどう舞台に立つかを考えられるので、そういう影響も面白いと思っています。

ーBプログラムをやる事で、期待した成果はどんな事ですか?

高:地元出演者は何らかのダンス経験者です。外の人が関わった時に、彼らがどう変わっていくのかに興味がありました。
松山の人だけではできない、外の人が来る事で何かしら起きる変化に期待しています。これを経た今後の日常、明日からも楽しみで期待しています。松山周辺で会った事のないダンサーにも出会っていきたいです。

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滞在制作がある事で、その当地の関係者にも刺激や循環をもたらしているのだと思いました。毎度挑戦で地道な事がほとんだと思いますが、このようにしてその土地のダンスの経験値を上げていくという、企画にもなっていると思います。

続いて、その松山Bプログラムの作家である大園康司さんと、かえるPというグループで共同主宰の橋本規靖さん(今回はアシスタントとして参加)に、公演後に話を聞きました。

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<大:大園康司さん 橋:橋本規靖さん>

ーまず終わってみての感想を教えてください。

大:1回公演しかないので、まばたきして終わってしまったような感じがあります。本番をやって得る事もあるので、ちょっと惜しいですね。

ーかえるPとして橋本さんと東京で活動していますね。あえてBプログラムを選んだ理由は?

大:こういう状況(ダンサーを募集する)を自分ではなかなかつくれないので。自分ができる事だけをやっていても頭打ちになってしまうので、自分だけでは出来ない事に自覚して挑戦してみたかったからですね。

ー普段はどういうペースで制作作業をしているんですか?

大:大きい作品は年1本から多くても2本なので、コンセプトから半年くらいかかって、実際の制作は3,4ヶ月程度。稽古はだいたい週3回とか。今回は30分の作品で、その分量に対しての稽古時間はいつもとそんなに変わらなかったのかなと。レジデンスだと毎日やるので、その密度が感覚的に違いましたね。

ー橋本さんは今回アシスタントとして入っているので、客観的に見えていると思いますが、どうでした?

橋:ここ2,3年は終始一緒にやって来ていて、今回は彼(大園)がつくった物の中に飛び込んだという状況でした。一緒にやっていると、あいまいにしてしまっている事だったり、抜けている部分に気づかないで進んでしまっていたり。彼が(大園)言いたい事やりたい事、こういう事を目指しているんだというものが見えたと思いました。一緒に作業してると、二人の考えている事がごちゃごちゃになってしまって、本当にやりたい事は何なんだと、わからなくなって来るんですね。その事に気づきました。

大:引いた目があった事で、何をやろうとしていたのか、自覚できました。反省点が多いですけど。

(ここで逆質問)
大:他の地域のBプログラムがどうなっているのか、興味があるんですが、どういう感じなのでしょうか。

國:もし行ける所があるなら、行ってみるといいのかもしれませんね。ダンサーを募ってつくる事を研究する意味では。企画側もやはり模索の段階だと思います。システムとしてトライアルな状況。その地域にダンスのポテンシャルがどれくらいあるか、これは平等ではないし、(作家のニーズに対して)うまく合わない事もあり得ると思うので、成果の出し方は結構難しいと思います。作家側も全くの他人(出演者)をどの程度求めて応募しているのか、という事もあります。
これらは、日本におけるダンス作品をつくる事に対して、一つの課題を示している事にもなるんじゃないかと思います。そういう事ではどこも挑戦しているのだと思うし、この状況を自覚するためには、他のBプロ作品を見る事は大事な事かもしれないですね。

(聞き手が國府田に戻り)
ーいつもは二人での活動ですが、それぞれ活動する基になる事はどんな事ですが?

橋:それぞれ興味が異なってますね。僕はスポーツトレーナーの仕事もしていて、毎日一対一で身体に向き合っています。歩いたり立っているだけでもその人の特徴が見えてくる。その事に興味があって、この感覚を舞台に上げる事ができないかと。

大:僕は現実社会の生活で必要な身体に興味があるんです。舞台における魅力的な社会性とは何か。
舞台上の表現的な身体は、社会では変わった動きですよね。強い身体、面白い身体というのがよくある表現ですけど、果たしてそれだけが良きものなのか。生きている社会性のある身体と、どこまでも変容していってしまう身体、の二極以外に。そうじゃない身体というものがもう一つあるんじゃないかと。
それで今回は、祭り(のような状況の身体)をテーマにしました。祭りは日常の空間で起きている事ですけど、身体がちょっと違う。そういうものを取っ掛かりにしようと思いました。

ー(社会性という事では)慣れていない人とやるBプロは良い事だったんですね。これは通わないといけない?(笑)

大:そうですね。だからアフタートークでも触れたんですが、まだやる事がありそう。
当初は、その街を前提に何をやれば良いのかを考えてしまったんですけど、でも、結局は自分のできる事やりたい事しかできないから、いつも通りのやり方をしようと、開き直りました。

國:(社会性を観察する意味で)もう一カ所くらいできると大園さんにとっては良いのかもしれませんね。比較して、見えてくる事がありそうですよね。大園さんが根底的に考えているテーマとつながってくるかもしれない。

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大園さんは、日常社会における身体性から作品に引き込める要素を探ろうとしているようです。橋本さんは、体そのものの特性の知識を活かしたいという様子。「社会性」という言葉がよく出てきましたが、その意味ではBプログラムに応募すると、街の人々と関わる事ができるので適しているといえそうです。現代社会を考察するその研究的な観点と、作品に昇華する創作的な観点。リージョナルダンスはリアルに街の人々が入ってくる事もできるので、そのリアリティをもって、どこまで作品を作っていけるか、目指す所なのかもしれません。

Aプログラムも少しですが触れておきましょう。ディレクターの水野さんは、今回のAプログラムが松山のお客さんにどう受け入れられるか、心配していましたが、アフタートークでは好評な感想がありました。私がインタビューした目黒さんの作品は”放送事故”のような危うさにも挑戦する内容で、演者と観客の関係性を揺さぶるようなものを感じました。川口作品はパワフルで間合いが潔い。全体としてはこれから4カ所あります。踊りに行くぜ!!セカンド、5年目の挑戦をぜひ見て下さい。

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