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参加作品・アーティスト選出方法

QUICK(MuDA)作品インタビュー

「踊りに行くぜ!!」Ⅱvol.3福岡公演(3/2)目前の、2月26日(火)稽古場である京都芸術センター制作室での通し稽古を見たあと、「MuDA G」構想・振付のQUICK、音楽の山中透、美術の井上信太にインタビューを行った。

インタビューの冒頭では、「体育会系だから」を連呼していたQUICKにとって、やはり山中、井上大先輩について語ることはなかなか難しいようだった。しかし、山中、井上両氏とずっと一緒に作品を作りたいというこだわりには必ず理由があるはずで、その答えを今回の作品から読み取りたいと思っている。

QUICKは本当に‘それぞれ’とか‘そのもの’という言葉よく使う。話を聞いているだけでは、何のことだかさっぱり分からない。きっと彼も(言葉として)分かっていないのではないかと思うし、誰も本当のところは分かっていないのだろう。けれども、今回のインタビューと稽古を通して感じ取れたのは、彼が何かをつかみ出した、という気配だ。

この気配は、このまま作品の中で増幅され、他のメンバーとの共鳴と反発により一層増長し、見ている私たちに言葉ではない、‘それぞれ’と‘そのもの’が振動として伝わってくるのではないかと期待している。(北本麻理)

日時:2013年2月26日
場所:京都芸術センター制作室

聞き手:水野立子/踊りに行くぜ!!2 JCDNディレクター
テープお越し・編集:北本麻理 JCDN
福岡公演舞台写真 photo:GO

 

— MuDA結成の一番最初から山中さんと信太さんはメンバーとして入っていたのですか?

山中・信太: (うなずく)

— それはQUICKさんからの依頼?

QUICK:合田(有紀)がもともと知り合いだったので、“MuDA結成の前に活動をしていた時からですね。

井上:可児市の『ala』 (可児市文化創造センター)でやりましたね。

— 最初にQUICKさんと話した時、こんな年寄りたち(井上、山中)と一緒にやらずに、もっと若い人と一緒にやればいいのに(笑)、と言っていたのに、MuDAのメンバーから絶対外せない魅力はどんなところにあるんすか?

QUICK:それはかわいいとか愛くるしいとか、、、失礼だけど、実力もあるし、、。
こう、、 何とかいうか、、僕とは違うというのが、面白いと思うことと、そう思わないこともあるし。。。。(ずっと言い辛そうな感じでもぞもぞ喋り続ける)

— 音楽家としては他にもたくさん選択肢がある中から、やっぱり山中さんと、という決定的な理由は?

QUICK:それはすごいからです

— (笑)他に言いようはー?

QUICK:・・・・(ずっと言い辛そうに)僕が評価することでは。。。山中さんは舞台上でDJをするので、僕ら(ダンサー)と同じく出演します。僕らは集まってすぐに稽古出来るのですが、場所の事情などで、山中さんはしょっちゅう集まることが出来ない。そんな中、瞬時に僕たちが作った作品のベースに対応し、作品の世界を広げることが出来るのは、作曲も、DJも出来て、経験値も高い山中さんしかいないように感じています。

 

 

— 信太さんについては?

QUICK:信太さん、、(まだまだ言い辛そうな様子は続く。。。)
”この人のこういうところがいい”みたいな、ある意味、評価をつけるようなことも失礼に感じて言いづらいです、、、僕は体育会系の流れがあるので、年上の先輩に対してリスペクトはもちろんですが、気を使ってしまうから、いきなり「オイッス!」みたいなノリで関わることが出来ないんですね。
単純に、一公演ごとに関わる人を変えていくと、濃い関係に到達できないように感じいて、いろいろな人と創作をしていくことも重要だけれど、関係性を継続していくことで、作品も関係性も深く広く発展していくと考えています。なので、信太さんや、山中さんとはずっと続けていきたいと思っています。

— 信太さんは何故MuDAのメンバーとして、やろうと思ったのですか?

信太:まず新しい身体パフォーマンスとしてMuDAはおもしろいと思いました。僕が想像している総合芸術として面白いし、山中さんと一緒にやりたいというのもあった。正直一回、二回で終わると思っていたんですが、どんどん面白くなってくるっていうか。想像以上にもっといろいろ表現できるな、と。いま考えているのは日本だけでなくて、もしかして世界にもっていったら何か凄いことが起こる可能性があるのじゃないか、と、戦略を練っています。

— 山中さんはいかがですか?

山中:そうですね。普通の舞台関係の作品と違って、僕はDJ的なミックスで、ほとんどの場合、曲は決めずに、このシーンにこの曲として作らず、こうなったときにこんな曲がある、というフリーなDJスタイルを舞台にもってきているんです。昔からそういう作品をいろいろやっていたことがあって。たまたまMuDAの前に(合田)有紀君にささそわれた時、「全部クラシックの曲でやってください」というオーダーがあって、それはおもしろいなと。 自分でしばりを入れて、自分の中でDJ的なミックスをして、それと舞台でパフォーマーが動いた時にどう観えているかということは、やりたいことだったし。それが今では僕のコンセプトの中に、違うコンセプトが入ってきたので、わざと実験音楽系のループのスタイルでやっているのですけど、今回の「MuDA G」は、そういうものに特化してやってみたいと思っています。

— 毎回DJスタイルというのは、変えずにやっているのですか?

山中:他にDJを呼んだりして、DJバトルを2人でバックでやりながら、MuDAが踊るというものとかはありました。まぁ、それは結構難しいですけど、従来の舞台音楽のシーンではなかなかできないことをやっているのではないか。と思っていて、まだまだ試行錯誤です。僕の中では負荷がかかっていて、何かぎりぎりな表現ができないかなぁと。負荷をかけるというのがMUDAのキーワードになっているので、そういう意味ではおもしろいかなと思っています。

— MuDAの公演活動としては、今までは自主公演がほとんどだったと思いますが、今回「踊りに行くぜ!!」Ⅱに参加することによって、二人のおやじが本気で熱くがっつりと、、激を飛ばしているところを何回か目撃しているのですけど、QUICKさんとしては、今回取り組み方が変わったなあ、というのはあるのですか?

QUICK:そうですね。。(考え込む)

— じゃあ、先に信太さんは?

信太:今回 「踊」Ⅱに参加して、今までのMuDAのスタイルが一気に崩されたと思っています。つくり方自体は、いい感じで作っていたのですけど。感想や助言などが、ひと言、ふた言入ってくると、意外とMuDAって弱いんだなぁと。

— 何が弱い? 精神?

信太:精神的に。

— 肝っ玉付いてんのかよ!っていう感じ?(笑)

信太:ほんと、そういう感じで。今回この数ヶ月。何回も崩壊しそうなことがありました。

— えーそうなんだ?それは知らなかった!!

信太:ということが、多々あったんですよ。

— え?何?? 誰かが泣き出したとか?(笑)

 

 

QUICK:いや、、あの。。今までにはないような、、今まではもっと、MuDAのメンバーが人数もいたし、今回は、すごいクリエイションの期間があって、1回(公演を)やって、また(次の公演まで)期間がある程度あって、みたいな、そういうクリエイションと再演を巡回公演で継続してやる、というスタイルは初めてですね。

— JCDNからもいろいろ言われるしねー。(笑) 

QUICK:(苦笑)

山中:もともと、人数の制限があるっていうのは、従来のMuDAとは全く違うから、、、

— いつもはメンバー何人でしたか?

山中:ほとんど(出演者の)リミットかけずにやっているとこあるから。

(後ろでQUICK「七、七、、」)

QUICK:そうですね

山中:逆に言えばその自由度のなかで、カオスが生まれたりとか。いまその手法をやろうとしたら、まず人数制限があって、その構造がくずれちゃっているということを、クリエイションをやっていて、みんな気づいてくる。そこからが大変やと。

QUICK:それを、最初は気合だけで

— やろうとしたんだよね。

QUICK:補おうとして、、、

 

 

— 作品、作品って、うるさい程いつも言われてねえ、今回は。(JCDNとの)コミュニケーションが、最初は成立しないこともあったけど、今はようやく少し慣れてきた感じかな。(笑)パフォーマンスだけでなく、 「G」という作品制作にアプローチしてほしい、ということは伝わってきました?

QUICK:やっぱり繋がりとか(を考えながら)、今までも全くなしでやっていたわけじゃないですけど、意味合いというのを、もっと単純にわかりやすかったというか、、、
「イケてる」という言い方は、足りていないですけど、「イケてる」なというものだったら無理やりそういうものを繋げていたのですけど、それは違うな、って言う事はちょっと思うかな。

— QUICKさんらしからぬ発言やん!!成長したー

QUICK:成長はしてないです、、、、(話が続く)

— 「イケてる」だけでやってたのから、それじゃあダメだって思ったんですか?

QUICK:まぁ、気持ちは変わっていないですけど、もうちょっと考えるようになりました。

— それは、すごいね。山中さん、信太さんのほうからみて、今回はちょっと違うというところありますか?

QUICK:(小声で)なんぼいっても、かわらへんって思われてる。。

山中:色んな要素が入って、例えば映像の小西君をメンバーに入れた事によって、そこから影響を受けている事もたくさんあるやろし、そういう意味で、今回のコンセプトにはものすごく価値があるなと。面白いネタがあって、今日も変わってきたし、面白くなってきた。こういうのがモノ作りやな、とかって思いながら。

QUICK:うーん、なるほどね。(初めて聞いた様子で)

— 今まで鳥取公演(1/14)と次、福岡公演(3/2)が、ちょっと間があいているけど、MuDAの自主公演だったら今回のようなところで公演しないでしょ?

QUICK:そうですね、京都。。(自主公演してきた場所を思い出しながら)

— 知らないところに行って、初めて見てもらって、色んなこと言われて、どうですか?楽しんでいる?それとも、そういうこと、辛いなあと感じていますか?鳥取公演後、24時間爆睡したとききましたが。

QUICK:うーん、そうですね。今までは、けなされた方が“チッ”ってなって「くそぅ」って奮起してクリエイションをやるんですけど、その感じになりにくかったなぁ、っていうのがあるんですね。

— それどういう意味なの? ごめん、信太さん通訳して!

 

 

信太:うーん、僕はそれはわからない。

QUICK:いや、そういう感じやったんですけど、あっそうか、ほめられて伸びる子なんや、と気づいた。(笑) 前は、ほんまに、なにくそって、やってた。ていうか長く生きてないし、キャリアもそんなにないですけど、今回は、へこんじゃったりっていう事が多かった、そういうのがあったなぁ。。でも、最終的にやっぱり一緒にやってるから、へこんでいて疑ったりとか、やっている人を疑ってしまったりとか、そういうこともあるんやけど、でもやっぱりそれは、間違ってるなって思い、勝手に自分でごちゃごちゃにしてやっていますね。

— 今回の「MuDA G」という作品の方向性をメンバーで、もちろん話し合ったと思うのですけど、最後にそれぞれの立場からのアプローチをお聞かせいただけたらと思うのですけど。では、信太さんからお願いします。

信太:「儀式」ですね。もともと、「儀式」と「議論」が僕の中での作品に対するテーマとしてあったので、まずはそれを核としてつくり上げてきました。

— この舞台美術の背の高い鉄製の椅子(いま座っている椅子のこと。)は、どういうところから出てきたんですか?

信太:本当はもっともっと高い、椅子に見えて椅子に見えないというか、、マッキントッシュ(チャールズ・R・マッキントッシュ:デザイナー)っていう有名な椅子をちょっと文字って、今回デザインしたのです。普段、僕はむちゃくちゃ(舞台)美術作るほうなんですけど、今回は巡回公演の移動、ほかの数作品とも同時上演、など色んな制限もあって、最低限の美術だけで、この「踊」Ⅱに挑もうと思っていて、空間構成であったりとか、今までは美術の方だけ見ていたのですけど、衣装であったり動きであったり、総合的に考えて舞台美術を考えました。

 

 

— 鉄を選んだのは?

信太:鉄はですね。
もともとのタイトルが最初は「鉄」だったんです。「議論」の前のテーマは「鉄」からスタートしていたんで、鉄で何か作ろうというでスタートしました。

— なるほどね。「鉄」と「議論」と「重力」というモチーフがあったんですね。

信太:かなり話し合って、それぞれがどんどん繋がっていきました。期間もすごく長いので、これだけ長く1つの作品に携わるっていうのもないことですね。

— 信太さんが美術家としての活動の中で、ダンスと美術の関わりについて、どのあたりを意識して取り組んでいますか? MuDAの身体と一緒にやることについてお聞かせください。

信太:そうですねぇ、初めは椅子を使わずに、、

QUICK:この椅子は、レジデンスの12月から(@db神戸 12/10 -12/16 )初めて使い始めたんです。それ以前の稽古では身体だけだった。

信太:当初は置いておくだけかっ?と思っていたんですけど、徐々に遊んでいただいて、僕が知らないところでガチャガチャやって、ああいう動きや身体と椅子との関係性が生まれてきたというのはすごくいいなと思って。身体と美術が繋がってきた。

— 今日、拝見したバージョンは、ラストは椅子が椅子でなくなっていましたね。

信太:そうですね。これは公演を観に来ていただいた方のため秘密にしましょう。

— なるほど。 では、山中さんお願いします。

山中:儀式性といわれているのがあったので、じゃあ「儀式」とは何ぞやみたいなところから、音を探っていった方がいいかなと思って、それと「G」っていう重たい「鉄」があり、そこから発想できる色んなものから、ある種ノイジーな、硬質な状態をどっかで作れたらいいかなと思いながら、クリエイションをしています。そういう形で音の「背景」みたいなものは、漠然と決めちゃっているんですけど、そこからどこまでズレられるか、も探ってます。今日の稽古では、そういズレとしてバイオリンの音を出してみたんですが、この「風景」では必要だったと思ったんで。

— なるほど。山中さんの得意とするところですよね。舞台の中でズレをしかけて、そこからこぼれるものが見えると面白いですね。舞台上のDJボックスが、今回は祭壇になってますね。山中さんが、「儀式」を司る主みたいですものね(笑)

山中:(笑)あれは、みんなでよってたかってやっちゃっただけで。僕は非常にやりにくい。

(一同爆笑)

QUICK:(笑)そうなんや!

山中:あの舞台上の祭壇BOXに入ると、音、聞えないからぁ。お客さんに煽るような音響が好きなんですけど、あそこでやっていると、ほとんど、僕にはお客さんと共有感がないので、非常につらい、とか思いながらやってます。

— 今回は、リハーサルの時は客席に卓を置いて調整ですね。

山中:どこまで鳴っているかっていうのを、身体で覚えたいと思っていて、鳥取のときでも舞台に上がるのが早すぎたって思いました。もうちょっとギリギリまで、客席からオペレーションしたかった。でも、舞台のセットでもやっておかないと、という怖さもあったし。初演の鳥取で舞台のセットからの様子は、だいたいわかったので、次からは音の構築をしっかりやろうかなと。

— では、QUICKさん、最後の締めをお願いします。ダンス・身体で今回の作品へのアプローチは?“ミソ”は、どこなんですかねぇ(笑)

QUICK:いやあ、難しい。「負荷」というか「G」というものは、「鉄」というのもありますけど、誰かが言っていた情報ではあるのですが、宇宙で鉄というのは安定する物質ということなので、そのものっていうのに宇宙は向かって行っていて。僕らはわからないですけど、そういうものに勝手に行っているのか?もしくは、行くって決めて探らなあかんのか?とか。
その中で、現代社会はどんどん個人の権利がちゃんとしていって、それは正しいと思うのだけど、それを履き違えたところで、「いやっ、俺は俺やし」ってどんどん個人が離れて行っちゃったり、見えてるものだけを信じるようになってきている。例えば「儀式」って、見えない何かに向かっているものだったりするのだけど、そういうものがどんどん排除されていく、合理的なものだけが残っていく。そういうのって、そのものに向かうには、逆の方向に行っているのじゃないかな、っていう疑問があって、そういうのに近づくには、“それぞれ”ではダメで、人と向き合ってぶつかったりしなあかんし、そこで思い切り負荷がかかる。そういうところから、単純に個々の身体にぶつかる“がっ”ていうイメージから、発想しました。

— 今の話すごくいい話ですね。“それぞれのー”って声高に叫ぶときの、QUICKさんの身体が最高におもしろいです。MuDAの身体が「G」に抗うような色んな側面が出せたらおもしろいですね。
「踊」2Aプロ初の地元京都出演者による京都公演になります。続いて翌週の東京初上陸を楽しみにしてます。皆さん、今日は駆け足でしたが、ありがとうございました。

 

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