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参加作品・アーティスト選出方法

生島翔・大迫毛太作品インタビュー

初演1月の鳥取公演と、2月仙台公演を終えた「真・奇想科学ダンサーボーイ」。
タイトルからして、おふざけなのかと思いきや、
フィクションのダンスヒーローをでっちあげつつ、インターネット上のダンスへの危機感から、現代のダンスのとらえ方を追求しようと目論む振付・ダンスの生島翔と、
フィクションとノンフィクションが交錯して、現代版ダンスの神話をつくりだそうとする、初体験の体をはったパフォーマンスをみせる大迫毛太、
キャラを地でいく説明不要の弾き語りで魅せるmmm、
という三者三様のアプローチ。

作品の着地点は何処になるのか?いまだ現在進行形。さすがに不時着するにもタイムリミッが迫る。2か所での公演を終え、客席のリアルな手ごたえに身を投じ、課題も見え、残すところ京都・東京公演に向けて最後の制作がスタートしている。
この「踊2」という企画―若手作家が新作制作に挑む過程では、必ずしもスムーズに制作が進行せず、難航することも多々ある。今回はそこをカッコつけず隠さずに、あえて掲載しようと思う。
作品制作の陥りやすい罠にはまった彼らも、そこから抜け出す術を得つつ、(いろんな人にくどいほど言われ)、最終巡回京都(3/9.10)東京公演(3/16.17)では、完成度をあげた上演となることだろう。只今、今までの紆余曲折を取り戻すかのように、猛烈に制作にまい進中。

3名に一同に集まってもらいスカイプで対談した回の録音をJCDN水野が失敗してし、録りなおすこととなった再録では、映像・演出・出演:大迫毛太音楽・出演:mmm振付・ダンス:生島翔の3名に個別に話を聞くことにした。

 

インタビュアー・テープ起こし・編集:水野立子

mmm(ミーマイモー)の場合

2/18京都にライブ出演にきたタイミングで Cafe Marble にて

外見は、のほほんとした女の子。だけど歌いだすとその透明感があり、パンチの利いた歌声にびっくりする。素直でぶっ飛んだ詩もいいです。mmmの世界にはまってしまうと、味わい深いですよ。

シンガーソングライダー mmmの活動
「無題」 今回の作品でもライブで歌っています。 PV撮影編集:大迫毛太
「マジカル・オムニブス号」 PV撮影・編集 大崎史丸 作 大迫毛太/きょんきょん
アニス&ラカンカ(mmmユニット) 「you're cool」 PV撮影編集: 大迫毛太

 

— ダンス作品制作に参加するのは初めてですよね?

はい、もう、まるっきり初めてです。生島から手伝ってよ、と声をかけられた大迫と一緒に参加しました。

— 普段はシンガーソングライターとして、作詞して作曲して歌って、と一人3役をこなしているんだよね。

そうですね。でも、音源をつくる時は人と一緒にやることはあります。なので、大崎と生島がちょっと弱いと思うところが、人と一緒につくるところなのかなって思うんで、その点、わたしはCD制作の過程とかで見れていたのかなあ、と思います。

— ダンス作品をつくることは、普段の曲つくりと違う難しさと楽しさってどんなところだった?

うーん、作詞作曲で言うと、1曲目のヒーローソングは、ほかのアニメの曲をカバーしてみて、どんなコード使っているのかな、とか調べるところから始めました。

— へー、どんな曲?ウルトラマンとか?

いやっ (笑) 

— あ、あれはアニメじゃないか。そんな古いのじゃなくてね。(笑)

そう(笑)もっと最近の。「戦姫絶唱シンフォギア」とかいう、女の子が歌うと変身して戦う、歌の力で敵を殺す、みたいな。

鳥取公演リハーサル 撮影:中島伸二

— へー、そんなのがあるんだ。それメジャー?

メジャーでした。全部見たけどストーリーは、つまんなかったです。歌はおもしろかったですけど。
他は、ラムちゃんの「うる星やつら」とか。

— この「ダンサーボーイ」のヒーロー曲って、「幽玄/ゆうげん」っていうタイトルがついているけど、サビの部分が「ゆーげーん」って歌っているでしょ?歌詞をもらうまで、「ゆーけー(行け)」って聞こえてた。(笑)

そうです。発音わかりにくいですね。

— 「幽玄」ってずいぶん難しいタイトルつけたよね。普段あまり使わない言葉だからちょっと想像できなかった。わび、さび、能、の世界だよね。しかもヒーローの曲につけるタイトルとしては、突飛だしね。この「ダンサーボーイ」のヒーロー像ってどんなこと考えてつくったのかな?ヒーローっていえば、地球を救うとか、誰か困っている人を救う設定だけど、この「ダンサーボーイ」の歌に込めたのは、何を救おうとしているヒーローだったの?

世界巨人を解体して拾い集めて、救おうとしているのは自分自身だった、みたいな。悲しいヒーローなのかなって思います。「幽玄」のヒーロー像は、世界中に散らばった自分を取り戻しに行く感じ。つまり自分が此処にいない、っていう悲しみ、探していくというようなことかな、って思いました。

— なるほど。作品のコンセプトとかは、生島大迫だと思うけど、どういうヒーロー像をつくるかはmmmのオリジナルに任されているの?

そうですね、ヒーロー像の歌詞に関しては、任されましたね。まあ、ヒーローらしくないですね。

— 「幽玄」っているタイトルは誰がつけたの?

それは私です。ほかの曲にも通じるのは、3人でいつも話していたのですが、ダンスは体がないと、成り立たないのかね、とか。けど、いろんな人の体があって、生島と大迫が同じ踊りを踊っても、同じなのか違うのか、みたいな。体のしばりが儚くも美しいみたいなことで「幽玄」と「有限」をかけて、「YUUGEN」ってつけました。

— ダンス作品をつくり始めるまで、見当つかなかったと思うけど、やってみてこれはダンス作品じゃないとできないなあ、とか新しい発見はありましたか?

うーん、まあダンスっていわれても・・・実は最初、音楽で参加して、って誘われて3曲だけ作ってって。だけど、実際は妊婦になったり、黒子で着替えさせたり、役目が増えていったんですよね。(笑)
で、そのスピード感とかテンポ感とかは、例えば、自分のライブとかだと、MCと歌があって、MCにあたるところなんです。で、そのMCは普段はまあ、そんなに気にしないけど、今回はそのMCで「ダメダメ」って言われてる感じです。(笑)舞台上で視線が定まってないとか。

— へー、そんなこと言われるんだ。(笑)

うん、大迫に。「幽玄」のボーカルの時や、妊婦のところや、着替えさすところで、袖で見えてるなら何かしなきゃとか。

— でもまあ、普段のmmmは曲をつくっているから、あんまり変わったことをやるっていう感覚じゃないんだよね?

そうです。二人みたいにダンスの歴史とか、ダンスを構成するとかは、全然、わかんないですけどね。思いつきやひらめきのアイデアは、どんどん言います。まあ採用されたらそれで、という感じ。

鳥取公演リハーサル 撮影:中島伸二

— 率直に言ってダンス制作は楽しい?

うーん、まあ、ダンス作品なのにこんなに踊れない曲ばっかり作ってしまって、いいのかなあと。だから不得意なのかなあ、と思ったり。(笑)作品つくりに関しては、こんなに長い時間をかけられる機会は滅多にないから楽しいんですけど、もっと有効に使いたいなあと思ってます。

—「踊れる曲」っていうのが、どういう曲かっていうのもあるじゃない。鳥取で一緒だったMuDAの音楽も、踊りやすい曲という選曲でもないしね。そもそも、踊りやすい曲をつくってください、という役割じゃなかったんでしょ?

まあ、そうですね、私は物語を伝える人、という役。大迫は、mmmがどういう曲を書くのかもよく知っていたから良かったんですけど、生島はたぶんそんなに知らなかったと思う。彼はノツテル時と、ノッテナイ時が、あからさまに解るから、ああ、生島を踊らせてあげられてないなあ、と思うのがちょっと心残りです。

— わたしがおもしろいなあと思ったのはmmmの関わりが、いわゆる、ダンスの伴奏だったり、ダンスを踊らせる曲つくりのためじゃなく、演劇的な語り部として入っていること。音楽家なのに、音楽家らしいアプローチじゃないのがおもしろいなあ、と。そういう音楽家の参入の仕方は、あまりないですよ。

うん、楽しい。もともと、声質や音楽的にも歌詞が否応なく耳に入ってしまう歌を歌っていると思っていたのですが、それがこの語り部的立ち位置に通じたんだと思います。歌詞を書くのも大好きなのでやり甲斐があります。

— そういう意味でいうと、最後のシーンだけが、初めていわゆるダンス作品でいう、普通の音楽家とダンサーが向き合うことになるんだよね。普段、ライブハウスで、歌で伝えるのと、劇場での舞台作品の中で歌うのと、フォーカスはどのあたりが違う?

いやー、全然違いますよ。難しいです。いやーだって、ダンスっていっても、演劇的な要素もあって、でも、私自身は作者じゃないから特に思いこみもないから、演者に徹しているわけだし、深い意図はなく、無心でやっています。自分が語り部として最初からダンサーボーイのすぐ隣にいて、翔君が前半でいろいろなところで、カタログダンスで冒険しているのを集めてきたけど、最後は一番近い女のところにあった、っていう解釈もできるなあ、と。

— そうなってくるとmmmが主役になったりしてね。

(笑)まあ私が集めてダンサーボーイをつくりあげる的な、そういう言い方もあったのかな、と。

— ラストのシーンで、自分の歌で踊っている人が目の前にいるわけだけど、その人との関係はどんな風に意識しているの?

こないだの仙台公演は少し感動しました。2回目、少しだけ。まあ周りにはあんまり良くなかったと言われたけど。初演のときは、自分は無心にやっているだけで、生島と切り離して自分だけで歌ってしまった。それが一番よくなかったな、と思ったので踊りを抱えるっていうか、踊らせてるっていう意識をもって、ダンサーの方をみたりして。少し繋がりができたかな、と思うけど、まだ繋がりが弱いですね。
同じ歌うにしても、一人で歌うのとまるで違うわけですから。

— そうだね、お客さんにしたら、あのラストの音楽とダンスのライブ曲で、それまでヒーローというつくりあげられたフィクションの世界から、“今”というリアルな時間に引き戻されるわけだものね。ここで、一気に伝えたい作品のテーマを届けることができるかどうか、という勝負曲のような気がするね。

もっと生島とグイッといきたいです、コネクションを。

— 今回、mmmのファンにみてもらいことは?

わたしの妊婦姿が見れること。(笑) 普段はしっとりめの女性シンガーソングライターでやってるんですけど、今回は初のカラオケに挑戦で妊婦ですからねー、なにしろ。(笑)

— はっはー確かにー、見逃せないね!

左:生島翔 右:大迫毛太 鳥の劇場での作品制作

大迫毛太の場合

2/19 JCDN事務所で電話収録

— 「ダンサーボーイ像」ってどんな風に考えているの?

そうですね。いまはネットを開けば自分が世界の人と繋がっていける気になるというか、これって人類がこれまで経験してこなかった初の出来事だと思うんですよ。で、生島と話していてダンス/ダンサーを軸にして世界に体が広がっていくというか、中身は誰でもよくて「ダンサーボーイ」というキャラクターだけがいて、いろんな人から踊らされるというか、そういう存在をイメージしています。

— 大迫くんが最後に踊ることになったけど、あれも「ダンサーボーイ」をやってるなの?

はい、そのつもりですね。もう一人のダンサーボーイ像、というか。誰もがダンサーボーイなんだと見てもらいたいです。

— 自分が出演することになったのは、よかったのか、いやだなあと思ってるのかは?

僕は裏方でずっとやってきたんですが、覚悟を決めて舞台に立ってみると、意外にスカッとするというか。(笑)やり切った後の感覚は初めてですね。舞台に出る人は前から知っていることなんでしょうが。

— 仙台の公演後、胃の中のものを全部吐いた!って聞きましたが。。。

ははは(笑)はい。この体験は、すごい新鮮です。あんなこと普段ないというか。人の前で何かやるというのは、頭で考えていることなんかどうでもよくなるくらい、身をもって強烈な体験をしました。人から見るとチョイ役なんでしょうが、緊張しすぎて毎回、何も考えられない、頭真っ白状態になってます。

鳥取公演リハーサル 撮影:中島伸二

— めったに見られないその緊張感が気の毒すぎるくらい、おもしろいですけどね。もう、鳥取のときは、初舞台でしかできないデビューパフォーマンスが、緊張感200パーセントだったよね。今後、パフォーマーとしてやっていくことはあるー?(笑)

いやーそれはやっぱりー。。。ないーですかねー。今回は止むに止まれずだからー。(笑)

— 今回、役割何個?多いよね?

演出、映像、美術、構成、と出演と。全部、中途半端になってます。キャパオーバーですけど、ここまで来たらもう楽しむしかないかなと。

— 今回、自分のやりたい新作をつくっていいよ、というかなりな楽しみなことだと思うんですが、これはもう自分たちにしかできないことだろう、これは絶対やってやるぞー、みたいなことは?

偉そうなことは言えないですけど、ダンス作品の作り方の常識があるとしたらー例えば、音楽家と振付家がダンスをつくるベースのようなもの、そういうのを全くなしでやっているんで、むしろ、わかってないことをやりきりたいとは思います。3人とも全く違う認識でダンス的な共通項もないし、分業で制作をやってきています。単に「ダンサーボーイ」って何だろう、というテーマでしか集まってないんです。なので、マイナス要素としては、3人で同じことを認識し、構築して練り上げていくという作業ができていない、足りないと思います。

— 逆に偶然性は生まれる?3人が音楽、美術、ダンスというジャンルからひとつのテーマに向かって、アイデアを出し合ってぶつけ合うという手法だね。

3人の分業から出てきたものを材料にしていくという、こういう曲作ってよ、というリクエストもないし、こういうダンスがいい、という注文から入るわけじゃなく、きたものにどう反応していくか、という方法をとってきました。

— それがうまく作用しているの?

だめなところと、いいとこと、どっちもありますね。
偶然や調整しないことから生まれたアイデアもありますが、最終、何度も繰り返し突っ込んで仕上げていくことが足りていないです。それは演出の僕の仕事だと思うんですが。アイデアは止めどなく出てくるんですけど、むしろ、それがありすぎて振り回されてしまうところがありますね。(笑)

仙台公演リハーサル 撮影:越後谷 出

— どこまでいっても満足しない、どこまでいっても納得できない病―初めて作品つくる時に陥りやすい病。決めきらないうちに、何をやりたかったのか輪郭もぼやけてしまう。それはもうなし、になったんだよね、有言実行あるのみ。

アイデア出しはたくさんあっても、演出家がまとめるというリーダーシップが欠けていました。2転3転して、あちゃー!って感じですかねー。ただ、そこが見えたので、いま、仙台を終えてガッツリとつくってます。

— ヒーローって子供のとき憧れていたけど、大人になると忘れてしまうでしょ。現代にもヒーローがいるといいなあ、とこの舞台をみているうちに、ぼんやり思えてきた。最後の最後に「ダンサーボーイ」がヒーロー=現代の神話になるっていう落ちが、薄っぺらな紙の上のことじゃなく、ダンスでしかできないことになって、見た方に感じてもらえるといいなあ、と思っています。

そうですねえ。2箇所公演して、ようやくそこが自分も出ることになって、そこを肯定してきたっていうところです。出演者でもあるのだけど、客席の代表みたいなところもあり、そこを共感してもらえると。

— 自分を救ってくれるヒーローは結局、自分なんだっていう、いろんな膨らみをもつ余白を出せるといいなあ。大迫くんがゲロ吐きながら出るかいがあるといいね。

いやー。そうですね。

鳥取公演リハーサル 撮影:中島伸二

生島翔の場合

2/19 JCDN事務所でスカイプ収録

— 今回、自分で踊っている「ダンサーボーイ」のヒーロー像ってどんな?

歌を歌うパソコン上のキャラクター、ボーカロイドの“初音ミク”みたいに、「ダンサーボーイ」もヒーロー像の器みたいなものだけで、ダンスの概念のようなものだと想定しました。例えば“白鳥の湖”を誰が踊っても白鳥になったり、黒鳥になったりできるわけですし。で、再演する場合は、同じ振付けでもその人なりの踊りの特徴が出てきたり、じゃあ、重要なのは振付けなのか、その人の体なのか、ってなったり、そこでまた60年代、70年代になったり、でね・・・ (超早口でまくしたてる)

― あーーーストップー。また、話しが長い!

いやー(笑)ただ最終的にいいたいのは、「ダンサーボーイ」なんです。ただ、ダンスがあるだけなんです!だから「ダンサーボーイ」の衣装は、黒タイツでキャラクターを消そうとしました。

— えー、「白」やめたの?白タイツに赤パンのほうがヒーローっぽいじゃない。

いや、やっぱ黒にしました。ベルトはしますよ。DBって胸に書きます。ダンサーボーイのDB。

— おっそいねー!衣装完成させるの!鳥取の初演までに作らないとー。
生島くんて、自分がダンサーとしてそこそこテクニックがあって、それだけ身体が動くのに、自分が一番ダンスで伝えられることを否定しているよね。

最近、そうですね。“コンテンポラリーダンス”といっても、アート全般で比較すると“コンテンポラリー”じゃないと思うんですよ。見せ方を新しく考えないといけない、と思ってるんです。ある意味、新たな形式をつくらないと、と思っていて。それで器だけ決めてダンサーボーイにカタログダンスを踊らせるというのをやろうと思ったんですが、想定していたことが実際やってみると、うまく伝わらなかったです。

仙台公演リハーサル 撮影:越後谷 出

— だって、カタログダンスみせられても、それで作品にはならんでしょ。作者の意図が不明になってしまう。そういう意味では、ダンサーボーイの無個性からリアルな体が生まれたあとの、ラストの2曲はどうみせたいのか、というのが重要では?

本当はあそこもカタログダンスの一部分でみせたいんです。ラストがオリジナル・ダンスという特別なものではなく。だから、カタログダンスの中でも、盆踊りを特に長くして、等分に見せようとしたんです。元々、村のお墓を中心に踊ったというその由来にも興味があったもので。

— それにしても生島君、盆踊りヘタだよね。(笑)だいたい腕が曲がんないものね。いかにも僕は西洋の体です、って感じ。

(笑)いやーそうなんですよ。ダンス始めたのがアメリカだったんでね。日本各地にある伝統舞踊を学びたくて、地味にはやってるんですが、まだまだ時間かかります。
カタログダンスを見せて、ダンスってカッコイイ!と思わせるためには、その道の一流の人に、例えばブレイクダンスだったら、MuDAのクイックさんに黒のタイツで踊ってもらうとか。

— えー、そういう想定なんだ。だけどさー、そういう意味のカタログダンスは、今はそれこそネットでも、舞台でも、簡単に見れるからねえ。

いやー、そうなんですよね。そうです。ここがミソだったのかなと思うのは、近年、いろんなアートのジャンルで「ヘタウマ」が多かったじゃないですか。

— ヘタウマの発祥の地はアメリカじゃん。

そうなんですけど、僕もダンサーの体になっているし、大迫も絵の技術はあるし、テクニックは否定したくないと思っています。かといって、テクニック崇拝主義の方向にもなりたくなくて。そのアンバランス感は、良くも悪くも出てると思うんです。実際、盆踊りヘタだし。見てくれた人が、あのダンスはカッコ良かった、悪かった、というのを両方アリを感じてほしいんです。

— ダンサーボーイは完璧じゃなくていいわけだね。

ダンスには、結局、テクニックはあってもなくても関係ないんだなあ、と。だから最後に大迫も出てくるわけですし。もしかしたら、カタログダンスのひとつを大迫に渡してもいいのかなあ、と思ったり。

— えーーー、それはすごい展開だなあ。生島くんはカタログダンスにこだわりがあるんだね。そこはわたしのこの作品への理解とはだいぶ違うなあ。

カタログというよりタグ付けとか、ハイパーリンクに近しいものをダンスでもつくりたいなと。あと、あらすじも書きなおしたほうがいいかな、と思っているんですよ。

ダンサーサーボーイの盆踊り

— あー、また始まった。最後まで決めない病。そうすると、世界巨人神話はどこに行っちゃうの。また、あっち行ったり、こっち行ったりかー。

そうですね、粘土みたいな作品ですね、これは。

— ネット上のタグ付けされたダンスを舞台上で実際やって見せて、そこから何を見せたいのか?が伝わらないと意味がないよね。

別にそれが面白いかどうかはわかりませんが、ただ現代はそういうことなんです。100年後に00年代はどういう時代だった、という会話になれば100%インターネットなんです。ハイブリットカーでもアラブの春でもモルキュラーガストロノミーでもなく、インターネットなんです。ハイパーリンクやタグ付けなどあらゆる事象が網目状に繋がる、ということが現代なんです。ものごとの解剖と結合、そして進化が同時に行われていることに興味があるのです。それを肯定も否定もしませんし、僕の意見を提示(これはインターネットから身体に対する影響の危機感から生まれた作品です、などといった主張)をしなくとも、それはダンスの踊り方(マジでやってみたり、おちゃらけてみたり、素で下手だったり)というかその作品を取り扱う時点で僕らなりのアンサーです。それをダンスでやっている、というところにつきると思います。そこに色々詰まっていると思います。と、また早口でまくしたてていますが、答えになってますかね?僕の考えとしては、。。。。。(以下略。ずっーとエンドレスで続く)

鳥取公演リハーサル 撮影:中島伸二

 

作品紹介

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